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虚血性心疾患

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カテーテル治療

■カテーテル治療

血行再建術の一つであるカテーテル治療は、腕もしくは足の付け根にある動脈から、心臓の入り口迄カテーテルという細い管を通して血流を再開通させる治療です。
具体的には、腕もしくは足の付け根の動脈から針で穿刺して、カテーテルと呼ばれる直径約2mmくらいの細い管を心臓の冠動脈の入り口まで挿入し、そこで造影剤を流し、冠動脈を確かめた後にこの中にまずガイドワイヤーと呼ばれる細いワイヤーを通して風船で膨らませることで血流を再開通させる治療です。 最近では再開通させたところがもとに戻らないように冠動脈ステントという金属の編み目になった管を冠動脈の中に留置するという治療を行っています。

■カテーテル治療のメリット

バイパス術は胸を大きく切って侵襲の大きい手術を行い、冠動脈の血行再建を行う治療ですが、それに対してカテーテル治療は非常に侵襲が少ない治療になります。ですから患者さんは治療が終わった後、立って歩くことも可能な非常に低侵襲な治療です。
再狭窄を起こすことがカテーテル治療の大きな問題でしたが、治療法も近年大きく進歩してステントや薬剤溶出性ステントが開発され、再狭窄を起こす事も著しく減ってきました。長期的な予後も徐々に改善してきていると言われています。
治療時間も短く、多くの場合は1時間から2時間くらいで終わる治療となります。

■カテーテル治療が向かない場合

左の一番根元の部分、左の主幹部という部分はカテーテル治療にはあまり向かないと考えられてきましたが、最近ではステントによる治療を行うことで比較的良好な成績があげられています。
しかし3本の血管の本ともに病気がある場合はカテーテルで治療しますと、治療回数が多くなってしまいますので、バイパス術のほうが良いことがあります。
また、血管によっては解剖学的に細いところにあったり、遠かったりする場合もカテーテル治療が難しい場合もあります。他には石灰化といって、非常に血管が固くなってしまった症例もカテーテルの治療が向かないことがあります。
ですから患者さん一人一人にあわせてバイパス術、薬物治療、あるいはカテーテル治療といった治療法の選択を行う必要があると考えています。

■カテーテル治療のデメリット

再狭窄が起きてしまうことも問題ですが、最近になって特にとりあげられている問題としてステント血栓症があります。ステント血栓症とは、ステント留置後にできる血の固まりのことです。血の固まりができると、血管内の血液の自由な流れが妨害されて、心臓発作や死亡に至るおそれがあります。

ステントは金属でできているものですが、最近よく行われている薬剤溶出性ステントはこの金属にポリマーをコーティングして薬物をポリマーから徐々に放出させ再狭窄を抑える方法です。ステントを留置するということは、身体の中に異物が入ることになりますので、血栓という血の固まりがつきやすくなりますが、特に薬剤溶出性ステントの場合はこの血栓がつきやすい状態が長い間持続するということも言われていますので、ステント血栓症に対する注意も必要です。

■薬剤溶出性ステント

当院では約8割の方に薬剤溶出性ステントが用いられています。
薬剤溶出性ステントには再狭窄の起こる確立がより低い値に抑えられるというメリットがありますし、心配されているステント血栓症に関しても、最近の薬剤溶出性ステントでは、特に血栓症の発症率を低く抑える可能性があるという研究結果も出されています。 これまでは従来型の金属だけのステントの方が血栓がつきにくいといわれていましたが、実はある種のポリマーが乗っているステントであれば、逆に減らすことも可能になっていることも最近では報告されていますので、 これに関しましては今後もデータを積み重ねて行く必要があると思います。



■抗血小板薬について

身体の中に異物が入ると、血栓、血の固まりがつきやすくなる、薬剤溶出性ステントであれば、血栓がつきやすい状態が長い時間にわたって持続する可能性があると考えられています。
血栓を防ぐため、抗血小板薬、例えばアスピリンや、クロピドグレルなどの薬剤を主治医に定められたとおりきちんと飲むということはステント血栓症を予防するうえで非常に重要なことです。