重症虚血肢に対する治療は様々なものがありますが、カテーテル治療とバイパス手術が中心になっています。カテーテルの技術が進歩していますが、膝から下の治療というのは再発が多いという事が知られております。それに対してバイパスというのは長期にわたって5年10年という単位で血流を維持できます。ただ、バイパスをする上では全身麻酔をかけなければいけないため、全身麻酔がかけられないような重度の合併症を持ってらっしゃる患者様や、傷が治りにくそうな患者様にはバイパスをではなくてカテーテルをお勧めする場合もございます。また、バイパス手術をしても成績がおもわしくない方が中にはいらっしゃいます。そういった方や、それから透析をされてる方、全身麻酔を必要とする大きな手術ができないような方にはカテーテルを先にやっていただくという方法も考えられていまして、そのことについてを現在臨床研究している最中です。
また、カテーテル治療は大腿部、骨盤部では非常に良い成績が出てているため、その部分をカテーテルで治して、膝から下をバイパスで治すというような組み合わせも治療も今非常によく行われておりまして、我々も活用しています。
人工血管は人工物であるため、多くの血が流れる場所では有効なのですが、感染を伴っているような患者様は使いにくく、また足首にバイパスするような場合には人工血管では詰まってしまいます。 そのため感染がなく、かつ膝の上の病気の方は人工血管を使う事ができますが、我々の患者さんの約8割が糖尿病の方ですので、そのような方にバイパスをする場合には自家静脈(自分の血管)を使ってそれをバイパスの材料にしています。ここで使う静脈の質というのは非常に治療成績を左右します。下肢には内股を通る静脈があり、この長い静脈を使ってバイパスをする事で長持ちをする血管バイパスが出来ます。この静脈を使うと、大体5年で8割くらいの開存率を得る事ができるのです。
このような治療により血流が良くなると筋肉に血流が行くため、歩行が楽になり、自分の足で自由に歩くということができるようになります。
血行再建後にいろいろなお薬を使いますが、そこには長持ちするはずの静脈グラフトが細くならないようにということと、血管病の進行、併発を予防することという2つの目的があります。
そして後半の方の目的が重要であると考えています。というのも全身の動脈硬化が合併していますので、心臓の狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などが起こる可能性があり、それは何年経ってからでも起こる可能性があります。そういった事を予防するために血液をサラサラにするお薬という物が必要になります。様々なお薬がありますが、出血を止めてかさぶたを作るために必要な血小板の凝集を抑制することが基本効果としてその中に幾つかの多くの種類があります。更にその作用として血管を広げるもの、動脈の弾力性を保持するような作用を持っているもの、コレステロールを下げる事で血管の中にあるコレステロールによって起こる病変を防ぐもの、などがありますが、このような薬剤をどのように使っていくかという事も、現在世界で研究されている所です。
将来的には、外科手術と血管内治療との両方をうまく組み合わせ、操ることのできるような、治療のチームを作っていきたいと考えております。それにより、患者様に最もふさわしい治療法を提供できるようになると思います。
また、今まで血管外科医しかしてこなかったような非常に細い1mmをきるような血管におけるバイパス手術と色々な組織を体のほかの部分から筋肉や皮膚を持ってきて、それを足の組織の欠損の部分に当てる、マイクロサージェリーと呼ばれる技術を取り入れていき、より多くの方を助けていきたいという風に思っております。
Copyright © 2012 - 2025 Cure Grades Corp. All rights reserved.
このホームページの著作権は、医師本人及びCure Grades株式会社にあります。当社の承諾なく、
本サービスに掲載されている画像・文章など全コンテンツの使用・転写を禁止いたします。