脳卒中初回発作後の平均余命7.5年、5年生存率50%(*図6)で、癌より悪いかもしれません。
なぜこうなるか。高齢者が多いからです。
ただ、若い頃に脳卒中を起こして、その後何十年も後遺症を持っている人たちもいます。
根底に生活習慣の乱れがあり、その一部の人がメタボリック症候群になります。
その中からリスクが出て、動脈硬化が進むと脳卒中になっていきます(*図7)。
治療技術の発展により脳卒中は治る病気となりましたが、リハビリテーションなども必要となって入院期間が長くなりますので病院のベッドが足りなくなるという問題が発生します(*図8)。
そこで、リハビリテーション病院と連携をしようと思い立ちました。
大阪の国立循環器病研究センターにいたころはなかなか転院先がなかったので、リハビリテーション病院との後方連携を確立して救急を成り立たせました。
今力を入れているのはかかりつけ病院との前方連携による予防です。
ただ、神経内科は脳梗塞だけ見ているわけではありません。
頭痛・めまい・しびれ、頭が痛い、ふらふらする、体がきつい、俗にいう不定愁訴の方もたくさんいらっしゃいます。
そして救急。
救急の中の脳卒中だけではなく、脳炎・髄膜炎、痙攣重積や、ギラン・バレー症候群、その他の難病も見ます。
難病もかなり治せるようになってきています。認知症も多くいらっしゃいます。そして、リハビリテーションもあります。
これだけの領域を、外科内科で組んでやりましょうということで、20年前に日本で初めて脳卒中パスの原型を作りました。
院内のシステム構築をやりつつ、地域にある医療資源の有効活用でかかりつけ医やリハビリテーション専門病院と連携してネットワークを作ろうというものでした。
かかりつけ医との前方連携と、リハビリテーション病院との後方連携。
専門病院との水平連携の中で脳卒中・脳梗塞を14日で見ようということを決めて、20年前に連携の会を始め、制度拡大をしようと仕組みも作りました(*図9)。
これが全国に広がりました。
急性期・回復期・維持期という形で動く動き方を2000年ぐらいに熊本で構築して(*図10)、熊本で脳卒中の地域連携パスを作って、ひとつの全国のモデルにしました(*図11)。
なぜ連携して地域連携パスを運営したりするかというと、脳卒中医療の均てん化です。
医療が高度化したため住んでいるところや病気になった場所によってその人が受ける医療が変わってしまい、誰にでも同じようなレベルの医療を提供することができなくなってしまいました。
脳卒中患者さんは170万人いると言われています。一方で、脳卒中専門医の数は十分ではありません。そこで脳卒中診療ネットワークを構築したり、脳卒中地域連携パスを作成して脳卒中診療体制構築を行いました。
急性期は「疾病」、回復期は「障害」、維持期は「生活」が対象となります。この違う対象を繋ぐために「リハビリテーションの継続」と「治療の継続」の2つが必要と考え手連携しています。
脳卒中というのは、地域全体で見ることができないと悲惨なものになります。
私は、頭痛にも携わっています。
頭痛を抱えている人は現在4000万人いて、非常に重要な症状です。
このネットワークを作って頑張っていた時期がありました。
頭痛は、初期を見落とすと命に係わる場合もあります。
日本頭痛学会が、頭痛教育センターを作るということを決めました(2014年)。
頭痛診療のためのネットワークのイメージは(*図12、13)です。
私たち神経内科医は、外来で数多くの患者さんを診ています。
基本的には、普段はかかりつけ医に診て頂き、何かあったら専門病院が診療するという連携で頭痛を診ています。
患者さんとかかりつけ医が普段連携しておいて、必要なときに専門医が係わります。
このように3者が上手く連携すると、それぞれにメリットが生まれますので、これをトリプルウィン(triple-win)と呼ぶことにしました。
認知症についても拠点病院があります。
認知症は主に精神科中心ですが神経内科でも結構認知症を診るので、精神科を補完する意味で、認知症のネットワークの中に入り込んで見ています。
多岐に渡る治療も、こういった形で連携しています。
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