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脳卒中について

脳卒中とは

脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることで、血流が途絶えあるいは脳の組織が出血によって壊れ、その壊れた脳の組織に応じたさまざまな症状が起こる病気です。卒中という言葉の「卒」は卒然=突然、「中」はあたるといい、突然として中るという意味で、脳の救急で起こる病気という意味があります。東北地方などでは、脳卒中のことを「あたった」といい、中という字がそのあたるなのです。

TIA一過性脳虚血発作という病気は「かすった」といいます。今も言うかはわかりませんが、そういう言い伝えがあるという話を聞いています。

脳卒中の種類

大きく分けて3つあります。
脳の血管が破れる病気が「脳出血」ですが、そこから詰まる病気である「脳梗塞」、脳の表面を走っている血管が破れる「くも膜下出血」という病気、そして脳の中に入っている血管が破れる「脳内出血」があります。したがって、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、というものが、主な病気ということで3つあげていいかと思います。

脳梗塞の中にもさまざまなタイプがあり、頭の中の細い血管が詰まる病気をラクナ梗塞。それから頭の表面を走っている大きな血管の動脈硬化をアテローム硬化といいますが、それによって起こる梗塞をアテローム血栓性脳梗塞。そして、脳の血管自体には問題がなくても、心臓に出来た血の固まりである血栓が頭の血管に流れ着いて詰まってしまうことがあります。よく「飛んだ」といいますが、実際は飛んでなくて流れてるんです。そういう脳梗塞があって、これは心原性脳塞栓症といういい方をします。

さらに、例えば脳の血管に炎症が起こる、血管に基づく脳梗塞。血管に傷が入って裂けてしまった動脈かい離に基づく脳梗塞あるいはくも膜下出血であったり、あるいは血液が非常に固まり易いサインを持った方が起こすような脳梗塞など様々なものがあります。あとは高齢化が進むにあたって、がんに伴って起こる脳梗塞も最近増えています。
そして肺がんや、腺ガン、ムチンという物質を出すようなタイプのがんがトルーソー症候群という名前の脳梗塞を起こす事があるので、気を付けなければいけません。

遺伝


脳梗塞の原因は生活習慣が圧倒的に多い

原則、脳卒中とは若いころの生活習慣の蓄積結果として起こってくることが多いです。したがって、遺伝するということは少ないのですが、近年では研究が進み、遺伝性の脳卒中もそれなりにあるという事が解ってきています。これは生まれつき、「ある年代になると脳卒中を発症する」ということがプログラムされているような方が残念ながらいるということです。そういった方は、普通の方に増して生活習慣病の管理し、少しでも脳梗塞、脳出血を起こさないようにするような対応、準備が必要です。

遺伝的な脳卒中の最初の発見のきっかけとなった病気が、CADASILという病気です。cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathyという病名の頭文字でCADASILなのですが、欧米で見つかったもので日本ではないといわれていました。しかし、私の生まれ育った熊本ではそこそこ多いということがわかり、今では日本全国からこの病気の報告が増えています。

この方々は高血圧、糖尿病や脂質異常症等々の、あまり動脈硬化の起因症を持ってないにもかかわらず、ある一定の年代になると最初は偏頭痛を起こし始めます。その後、脳梗塞を繰り返しながらだんだんと認知症に至ってしまう、そういった経過を辿ってしまう人が多いのが特徴です。

症状


50代以降に増える傾向

好発年齢は、脳卒中の種類によるのですが、よくある脳梗塞・脳卒中は、動脈硬化が進んだころから起こってくる事が多いです。したがって好発年齢というと、50代60代70代と年齢を重ねる毎に増えていきます。患者さんの顔付きを調べてみると、45歳を超えると通常の脳梗塞の顔付きをした人が多く、45歳未満の人だと少し普通と違うことが多いと感じます。若年性で起こるときには、45歳未満の方は特に血液が固まりやすい病気がないか、血管が裂けていないか、あるいは心臓に穴が開いてて静脈系の血栓が脳梗塞を起こしていないかという事も調べなければなりません。

30代40代での脳卒中のケースは、脳梗塞を起こす方よりも、血圧が高いまま放っとおいて脳出血で運ばれてくる方が多いイメージがあります。若い頃に不摂生をしたツケをいつ払うかという事なので、若年発症だといっても「40歳だけど30年高血圧歴がある」ですとか「50歳だけど喫煙歴が40年だ」とかいう方もいます。あとは80歳代や90歳代となると圧倒的に心房細動を持ってることが多いので、心原性脳梗塞性が指数関数的に増えてきます。

初期症状は、脳のどこにどんな病気が起こるかで全く異なります。したがって、同じ病名がついた方が10人いたら、10人とも症状が異なるのです。そのため、定型的に「この症状であれば脳卒中」というものは言えません。頻度の高いものとしてくも膜下出血は、バットで頭を殴られたような激烈な頭痛を伴うことがあります。このイメージが非常に強いので、大体の方は脳卒中の症状というと頭痛と答えます。しかし、脳梗塞で頭痛が起こることは少なく、多い症状は半身の麻痺、あるいは感覚障害、そして言語障害というようなところが多いのです。右手と右足、左手と左足のように体の片側に症状が出てる場合は、脳卒中を必ず考えてすぐ対応しなければいけません。

後遺症


後遺症による感覚障害

後遺症は脳卒中の症状次第ですが、多いのは片麻痺、半身の麻痺、動かない、あるいは感覚障害が残ってしまったという事もあれば、厄介なのは痛みがずっと残ってしまったり、いわゆる痺れ感にずっと悩まされる方もいます。そして失語症といって、言ってることはわかるけど自分で話そうとすると言葉が正しく選べず話せない、逆に聞いてる内容が全然理解できないというような症状もあります。さまざまですが、特に多いのはやはり片麻痺です。これは、しっかり動かすようにしていないと関節まで固まって、骨も委縮してくるというようなことが起こるので、継続したリハビリをずっと続けるとことが大事です。