石口恒男先生のウェブサイト

腹部大動脈瘤のステントグラフト治療

腹部大動脈瘤とは動脈硬化が原因で大動脈がこぶのように膨らんだ状態です。直径が5cmを超えると破裂の危険が増大するため、治療が必要となります。従来は人工血管で大動脈を置き換える手術が標準的でした。ステントグラフトは大動脈瘤の新しい治療法で、金属製のステントという器具を人工血管でカバーしたもの(ステントグラフト)を、細く折りたたみ、大腿の付け根の動脈から挿入した径7〜8mmのチューブを通して大動脈瘤の中に留置するものです(図1)。開腹、開胸が不要のため、外科手術のリスクの高い方にも比較的安全に施行できます。ステントグラフト留置後は動脈瘤が血栓化し、破裂が予防できます。

対象となる患者さん
腹部大動脈瘤で、種々の理由で外科手術が困難な患者さんが対象です。腎動脈の分岐部から大動脈瘤までの距離が15mm以上あること、左右腸骨動脈の直径が6.8mm以上あることが適応条件です。これらの条件をマルチスライスCTの画像で正確に評価し、計画を立てることが最も重要なポイントです 。

手技の様子、実績
血管撮影室で、主として局所麻酔下に治療を行います。通常のIVRでは皮膚の上から動脈を穿刺して行いますが、ステントグラフトは器具が太いため、血管外科の医師と協力し血管を露出して治療を行います(図2)。 私はこれまでに腹部大動脈瘤と胸部大動脈瘤をあわせて200例のステントグラフトを施行しました。90%の以上で動脈瘤が血栓化し破裂が予防できています。2006年後半に欧米の製品が日本でも認可され、2007年12月までに32例の治療を施行していますが、手技の成功率は100%で良好な結果です(図3)。


▼図1.ステントグラフトクック社資料より
ステントグラフト

▼図2.ステントグラフト治療の状態(右から2人目が筆者)
ステントグラフト治療の状態

▼図3.腹部大動脈瘤のステントグラフト治療前(左)と治療後(右)のマルチスライスCT像
腹部大動脈瘤のステントグラフト治療前(左)と治療後(右)のマルチスライスCT像

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