脳の血管(動脈)の一部分が膨らみ、コブ(瘤)のような形になった部分を動脈瘤と呼びます。動脈瘤の壁は正常の血管壁よりも弱いので破れる危険性があります(これを動脈瘤の破裂と言います)。動脈瘤が破れると血液が周囲に漏れて、くも膜下出血と呼ばれる状態になります。くも膜下出血になると、強い頭痛と吐き気が突然発生し、重度の場合には意識を失い危険な状態に陥ります。
最近は、脳ドックの普及や画像診断技術の進歩により、偶然検査で脳動脈瘤が発見されることが多くなりました。破裂する前に見つかった脳動脈瘤を未破裂脳動脈瘤といいます。
未破裂脳動脈瘤は、発見時にはほとんどの方が無症状です。脳動脈瘤の位置や大きさによっては、脳の神経を圧迫したりすることによって、物が二重に見えるなどの視覚症状を伴うことがあります。
くも膜下出血を発症すると、3分の1の方が亡くなり、3分の1は後遺症が強く残り社会復帰をあきらめる状態、残り3分の1が社会復帰できると言われています。よって脳動脈瘤が破裂すると、ある日突然、命にかかわる状態になってしまうわけです。そういう意味では恐ろしい病気と言えますが、破裂する前に治療することによって、くも膜下出血を未然に防ぐことができます。しかしながら未破裂動脈瘤がいつ破裂するか、現在の医学では明確に予測できません。一生破裂しない方もいます。正しい知識と的確な診断によって治療について検討する必要があります。
原因は明確にはわかっていません。
脳動脈瘤は、脳の血管が分かれている部分に多くみられます。血管の分岐する部分に動脈の強い血流が当たることによって、また加齢による動脈硬化などが影響して、脳動脈瘤を形成すると考えられています。高血圧や喫煙、血管壁が生まれつき薄いなどの遺伝も要因と言われています。
未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は必ずしも高くないため、その位置や大きさなどにより、手術などの具体的な治療が必要か、または経過観察していくのかを総合的に判断する必要があります。
具体的な治療が必要と判断される基準は、次のようになります。
■脳動脈瘤の大きさが7mm以上
■最初小さくても成長してくる脳動脈瘤(経過観察による)
■年齢が70歳以下の場合
■家族歴(くも膜下出血)のある人
治療が必要と判断された場合には、次のような方法により予防治療を行います。
■頭蓋骨開頭手術による開頭クリッピング術
■カテーテルによる血管内治療である脳動脈瘤コイル塞栓術
手術による治療方法の詳細については、「治療について」のページをご覧下さい。
治療後の再発については、年間1~2%の確率で新しく脳動脈瘤が出来ると言われています。
その他、未破裂脳動脈瘤が破裂する要因として、高血圧や喫煙、飲酒などがあります。これらに対しての生活指導や具体的治療が必要となります。
残念ながら薬剤治療によって破裂を防ぐことはできません。経過観察となった場合は、半年または年に一度、MRI画像で脳動脈瘤の大きさが変わっていないかなどを検査します。
先に述べましたように、未破裂脳動脈瘤は無症状がほとんどで、一生涯破裂しない人もいます。では破裂する確率はどのくらいで、手術による治療の必要はあるのでしょうか。
データとしては、5mm以下の未破裂脳動脈瘤の場合、破裂するのは年間1%の確率と言われています。未破裂脳動脈瘤が発見されてから後、10年生存すれば10%、20年生存すれば20%の確率で破裂するということになります。
このような確率をもとに、年齢的な観点から言えば、70歳以下の患者さんには手術をお勧めすることも多くあります。高齢になると体力の問題などもあり、手術すべきかどうかは脳動脈瘤の位置や大きさ、形などから総合的に判断します。 また、くも膜下出血になったご家族がいる場合や脳動脈瘤がこれ以上の大きさの場合は、破裂の危険性も高くなるため手術をお勧めしています。
未破裂脳動脈瘤を手術治療することにより、破裂するリスクは低くなりますが、当然ながら手術をするリスクというものもあります。クリッピング術においては神経損傷により脳梗塞を起こしてしまう可能性や、開頭手術による身体的、精神的な負担もあります。
手術による治療をすべきかすべきでないか、患者さんにとっては大きな選択となります。それゆえ、患者さん個人を取り巻く環境なども含め、さまざまな角度から総合的に判断する必要があります。
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