未破裂脳動脈瘤の治療

 未破裂脳動脈瘤の治療には主に2つの方法があります。「クリッピング術」と「コイル塞栓術」と呼ばれるものです。脳動脈瘤の大きさ、形、位置や患者さんを取り巻く環境などにより、どちらの術式で行うのかを選択します。


クリッピング術

 脳動脈瘤の根元をクリップでつまんで閉塞してしまう手術です。クリッピングにより脳動脈瘤中の血流は遮断され血液が流れ込まなくなるので、破裂を防ぎます。




 手術は全身麻酔で行われ、開頭手術となります。歴史のある手術法であるため、実績も多い治療方法と言えます。頭蓋骨を開けるという大きな手術になるためリスクも伴います。脳に直接触れるということは、脳梗塞などの神経合併症の危険性もあります。特に脳の深い場所に位置する脳動脈瘤の場合は、下記に示したコイル塞栓術よりも神経合併症の治療リスクは高まると言えます。
 クリッピング術に適している症例としては、脳動脈瘤の位置が頭蓋骨を開けたときに近い場所(比較的浅い場所、中大脳動脈瘤といいます)にある場合です。再治療になる可能性も低いので、開頭手術のリスクはあっても破裂を高い確率で防ぎたいと希望される方に適しています。


コイル塞栓術

 カテーテルと呼ばれる細長い管を血管の中へ入れて治療する、切らずに行う治療です。ふとももの付け根からカテーテルを入れ、脳の血管まで進めます。そしてコイルと呼ばれる糸のように柔らかく加工したプラチナ製の針金を脳動脈瘤の中へ埋め込みます。そうすることにより、脳動脈瘤の血流が遮断され、出血を防ぐことができます。プラチナは錆びることもなく、人間の体の中でアレルギー反応を極めて生じにくい安全な物質です。クリッピング術が苦手とするような場所にある脳動脈瘤に特に適しています。




 手術は静脈麻酔や全身麻酔で行われます。静脈麻酔の場合は麻酔薬により患者さんは半分うとうとしたような状態で行われます。手術にかかる時間は2、3時間ほどで、入院期間は5~7日間です。手術前後のしばらくの期間、血液をサラサラにする薬を飲みます。治療時にステントと呼ばれる、筒状の網目の金属を使用した場合は長期(通常1~3年以上)の薬剤治療が必要となります。退院後も内出血などのリスクがあるため、数日は自宅療養が必要ですが、その後は社会復帰や運動も可能となります。
 コイル塞栓術のメリットは開頭による手術ではないため、身体への負担が少なく社会復帰が早いということです。またクリッピング術では苦手とする部位にある脳動脈瘤でも比較的安全に治療ができます。
 本治療法は約20年前に国内で保険で認可され、同程度の実績があります。その中で脳動脈瘤内のコイルが圧縮されることなどにより脳動脈瘤が再発し、再治療が必要となる割合が治療した患者さんの5~10%と言われています。再治療患者の多くは治療後2年以内に再治療が必要となっています。
 現在も急速に進化している治療法であるので、治療する医師にも最新の知識と技術が求められる治療法でもあります。


 

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