
不眠の原因

年齢が重なってくるとになかなか眠れないといった状況があります。
一方、若い方の場合には仕事のストレスがあって、抑うつ状態になっている疑いがあります。ぐっすり眠ることができない、仕事もしくは家庭のストレスによって抑うつ状態であるか、ストレスによって不眠が引き起こされているか、が判断材料の一つになります。
また、高齢者に関しては、昼間の生活習慣も重要になってきます。例えば、昼寝していたら夜眠れないということがあります。血圧が高く、睡眠不足の方には生活習慣の改善をしていただきますが、それでもなお通常の血圧が高い場合には適切な降圧療法をしていきます。
そのうえでさらに睡眠障害がある方には、まず無呼吸がないかどうかをチェックします。無呼吸がない方は本当の睡眠障害ということになりますので、その場合は睡眠導入薬を処方します。
睡眠の質
朝血圧が下がっている睡眠を質がよい睡眠と考えてください。
睡眠の質というのは何で評価するかというと、
通常は次に挙げる4つの質問で評価します。
![[すぐ眠れますか?][頻回に覚醒しますか?][ぐっすり眠れますか?][朝はどれだけ早く目が開きますか?]](img/disease02/check01.jpg)
これに加えて、何時間寝ているか?という「睡眠の量」を質問していきます。
睡眠の質を評価するということはなかなか難しいのですが、寝る前に比べて朝上がる、ME(モーニングとイブニング)の差で睡眠の質を評価できるのではないかというのが、私が持っているコンセプトです。
不眠と高血圧の関係

基本的に高血圧になったから睡眠不足というのは、ほとんどありません。しかし、睡眠不足や無呼吸があって高血圧になることはよくあります。原因を放っておいて血圧を下げる治療を処方していても改善されない場合があります。
従って、血圧の3つの薬を投与して治療をしても、睡眠不足が続いていた人は血圧のコントロールが上手くいかなかいことがあります。そういう場合は、睡眠時無呼吸症候群や不眠を改善し、睡眠の状態をよくするための治療をします。これによって朝の血圧が下がる、睡眠と高血圧の関係はそういう関係です。また、不眠が続くと高血圧が悪化するということがあります。
不眠状態になると、メラトニンなどの物質が低下して、交感神経が亢進します。交感神経が亢進すると、血管がぎゅっと攣縮し、心拍出量も大きくなります。こういったことも血圧を上げる要因です。それとともに、体の中の塩分を排泄する力が抑制されると言われています。いわゆる食塩感受性体質で、同じ分量の塩分を摂っても体の中から塩分を排泄しにくいので、高血圧になりやすいということです。
睡眠導入薬の効果
高血圧の方に睡眠導入薬が二次的に効くということがあります。
ただし、睡眠導入薬というのは降圧薬ではないので、基本的な降圧薬の治療をしてもコントロールがつかない場合、その次に検討するべきだと考えています。特にモーニングとイブニングの血圧の差が大きい方には睡眠障害について確認、改善をする必要があります。
それによって、朝の血圧が下がる、ということはよくあることです。私の患者さんでも、典型例では朝の血圧が高くて、寝る前の血圧が低いモーニングとイブニングの差が異常に高い方で降圧薬剤を使ってもなかなか下がらない場合には、睡眠導入薬を寝る前に投与してぐっすり眠っていただくと、モーニングとイブニングの差が小さくなって、理想的な状況になるということはよくあります。
以前は睡眠導入薬を投与すると認知症になったり、転倒したり、といったことが危惧されてきました。しかし転倒についてはアメリカなどのデータでも、実際には不眠の状態がよくないことによるもので、睡眠導入薬が直接の原因ということは非常に少ないだろうと言われています。認知症に関していうとリスクは一切ありません。
なお、睡眠導入薬の種類としては、徐波睡眠といって、体を休めることができる睡眠というのがあり、特に入眠してからちょうど4時間半くらいの間、そこに一番よく表れると言われています。深い睡眠、徐波睡眠、これを保つ睡眠導入薬が睡眠の質を低下させずに夜ぐっすり休めるということが知られており、このような睡眠導入薬が理想だと思います。
血圧を下げる薬剤と睡眠導入薬を一緒に服用することによる副作用の心配はなく、併用しても大丈夫です。