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Dr.KOHKI NAKAMURA's
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中村 紘規 先生

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デバイス治療

ペースメーカーの適応となる病気

ペースメーカーは脈が遅くなる不整脈、いわゆる徐脈性不整脈に対する治療となります。具体的には洞不全症候群、あるいは房室ブロックという不整脈です。ただ脈が遅いだけではペースメーカーの適応となりません。これらの不整脈に伴う高度の徐脈によってめまいや失神を起こした場合、心不全を発症した場合、自覚症状は乏しいものの心電図検査によって高度の徐脈が確認され、今後失神や心停止を起こす危険性が高いと判断された場合にペースメーカーの適応となります。

ペースメーカー植え込み後はある一定の心拍数以下にならないようペースメーカーが心臓を電気刺激し、脈を補います。それにより失神や心停止を回避することができます。

ペースメーカー植え込み後に気をつけること

ペースメーカーは強力な電磁波の影響を受けると、正常に作動しなくなることがあります。日常生活ではスマートフォンやIH調理器などが影響を受ける可能性のある機器になりますが、前者は15cm、後者は50cm程度ペースメーカー本体と離れていれば問題なく使用できます。従来のペースメーカーを植え込まれた患者さんはMRI 検査を受けることができなくなりましたが、現在はペースメーカーの設定や術後の期間、検査を受ける施設など一定の条件がクリアできればMRI検査を受けることができます。

注意が必要なのは電気自動車の充電です。通常充電であれば問題ありませんが、急速充電の場合、原則充電器に近づかないようにする必要があります。

ICDの適応となる病気

ICD(埋め込み型除細動器)は心室頻拍や心室細動という心停止に至る不整脈に対する治療です。これらはAED(自動体外式除細動器)で電気ショックが必要となる不整脈でもあります。心室頻拍・細動を起こしたことがある場合、あるいは今後起こす危険性が高い場合にICDの適応となります。

ICD植え込み後は心室頻拍・細動が起こった場合、ICDがそれを感知して自動的に電気ショックをかけ、不整脈を停止させます。ICDにはペースメーカーとしての機能もあるため、徐脈のときには心臓を電気刺激することもできます。

ICD の交換

ICD植え込み後の患者さんは定期的に外来で不整脈の有無、電気ショック治療の有無などと同時に電池残量を確認し、電池が完全になくなる前に交換手術を行います。不整脈に対する電気ショック治療が頻回に行われた場合は電池の消耗が早くなり、逆に電気ショック治療が行われなければ電池は比較的長持ちします。平均7-8年くらいの間隔で本体の交換手術が必要になります。

電気ショックがかかると患者さんは気づく?

心室頻拍・細動が持続した場合、患者さんは意識がなくなってしまうため、電気ショック治療が行われたことに気づきません。しかしながら、不整脈が起こってから意識がなくなるまでの時間は個人差があるので、若干意識がある状態で電気ショックがかかることもあります。

通常、電気ショック治療は心室頻拍・細動に対して行われますが、本来電気ショック治療が必要ない不整脈やノイズを感知して作動してしまうことがあり、これを誤作動といいます。誤作動の場合、患者さんは意識がなくなる不整脈が起こっているわけではないため、意識がはっきりした状態で電気ショックがかかりますが、ICDの改良によって誤作動の頻度は非常に少なくなっています。

CRTの適応となる病気

心臓再同期療法(CRT)は心機能低下、心不全に対する非薬物治療です。心機能が低下すると、心臓が収縮するタイミングにずれが生じ、効率良く血液を全身に送り出すことができなくなります。このずれをペーシング(電気刺激により心臓を動かすこと)によって補正し、心筋梗塞や心筋症などで傷んだ心臓の筋肉をできるだけ効率よく動かす治療をCRTといいます。CRTに用いるデバイスはペーシングによる心不全治療のみを行うCRT-Pと、ICD機能を併せ持つCRT-Dの2種類があります。高度に心機能が低下すると、心室頻拍・細動という致死的不整脈を起こす危険性も高くなります。そのような患者さんでは心不全治療+致死的不整脈による突然死予防のため、CRT-Dを用います。

ICDやCRT-P/CRT-D植え込み後に気をつけること

基本的にはペースメーカーと同様です。除細動機能を有するICDおよびCRT-Dでペースメーカーと異なる点は、強い電磁波を発生する機器を使用する、あるいは近づきすぎると、これらのデバイスは心室頻拍・細動が起こったと誤って判断し、誤作動する可能性があります。そのため、高周波・低周波治療器や電気自動車の急速充電器などの使用は控える必要があります。

デバイス治療と薬の服用

現在のところペースメーカーの適応となる徐脈性不整脈を確実に治療できる薬はありません。一方、ICDや CRTによる治療を行う患者さんの多くは薬の治療が必要になります。ICDは致死的不整脈が起こったとき電気ショックにより不整脈を停止させる機器であり、不整脈そのものを予防することはできません。また、電気ショック治療はそれ自体が心臓の負担になります。ICDの植え込みを行った患者さんでも、可能な限り電気ショック治療が行われないことが望ましく、不整脈を起こさないために薬物治療やカテーテルアブレーションを行います。心筋梗塞や心筋症など不整脈以外の心臓病を持っている患者さんでは、それらに対する薬物治療も同時に行います。CRT-D に関してもICDと同様で、特に心不全に対する薬物治療を十分に行う必要があります。