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硬膜動静脈瘻とは

脳は周りを硬い膜に覆われて頭蓋骨の中におさまっています。この脳を覆う硬い膜のことを硬膜と呼び、硬膜の中にも動脈と静脈が通っています。本来この動脈と静脈は毛細血管を介してつながっていますが、硬膜の中を通る動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながってしまった状態を硬膜動静脈瘻といいます。この病気は日本では1年間に300人から400人程の患者さんしか発症しない非常に珍しい病気です。

脳の血管の流れは上水道・洗面台・下水道に例えることができます。上水道は動脈に相当します。洗面台は脳そのものです。下水道は脳の静脈にあたります。普段なら上水道から流れ出た水は洗面台に必ずたまります。そして洗面台を経て下水道に出て行きます。硬膜動静脈瘻は上水道から下水道に洗面台を介さないでも通ることができる連絡の道ができてしまっている状態です。こうなってしまうと連絡の道を通って上水道から下水道に直接水が流れてしまいます。ただ下水道に流れ出る一方であればそれほど症状はでません。しかし下水道から溢れかえって洗面台に逆流してしまうと脳は血液で圧迫されてしまい、出血を起こしたり、静脈が詰まったりといろんな症状が出てきてしまいます。

硬膜動静脈瘻にかかりやすくなる要因

硬膜動静脈瘻全体でみると男女間で患者さんの数に大きな差はありません。しかし部分的にみていくと海綿静脈洞という目の奥にある箇所に関しては著明な差があり、女性患者さんが8割から9割を占めています。また、年齢別にみていくと好発年齢はだいたい60~70歳代であり若い患者さんはそれほど多くいらっしゃいません。60~70歳代の方の中でも70歳前後の方に1番多くみられる疾患です。

自覚症状

海綿静脈洞の硬膜動静脈瘻の場合、目の充血や眼球突出という目が出てくる症状があります。そのため多くの患者さんはまず眼科に行かれ、そこから私のところに紹介していただくことになります。

頭の後ろの部分で起こった硬膜動静脈瘻の場合は耳鳴りがします。普通の耳鳴りはキーンという持続音ですが、この病気の場合、血液の流れる音が聞こえているため脈拍に合わせて音が聞こえます。一度耳鼻科を訪ねた患者さんが私のところに紹介されることになります。

検査について

MRI検査を行えば硬膜動静脈瘻であるか否か確認することができます。この病気であると分かった場合は入院していただき、今後の治療方針を決めるために血管撮影というカテーテルを使った検査をすることになります。

治療について

硬膜動静脈瘻は治療をすればほとんどの場合完治します。また、手術をすることは非常に少なく8割から9割程度の患者さんはカテーテルで治ります。カテーテル治療では異常がある血管の場所までカテーテルを通してそこにコイルを入れて詰めるというものが基本的な治療方法となります。この病気は動脈と静脈にまたがっていますが出口をコイルで詰めてしまえば行き場所がなくなり自然に治ります。出口を詰めたら脳の血管の出口もなくなってしまうのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが脳の出口は複数箇所存在するため出口を1つ詰めても、特殊な場合を除き支障がでることはありません。

治療は1回で終わらないことも多く、平均2回程度の治療が必要になります。1回の治療に10日程度。2回であれば計20日程、1ヶ月程度の間隔を開けて治療にまた来ていただくということになります。この病気は治療で動静脈瘻が止まればほぼ根治という状況になるため、後遺症がなければ退院後すぐに社会復帰ができます。 完治さえしてしまえば再発する可能性も5%程度と低く、再発しても同じ治療で治せるケースがほとんどです。