重症虚血肢の治療

バイパス手術とカテーテル治療

 患者さんが手術に耐えられてなおかつ病変が長い場合はバイパス手術が最善だと思います。
ですが重症虚血肢の患者さんは全身的に合併症のある場合が多いためバイパス手術は命の危険を伴うこともあります。そういう場合はカテーテル治療を選択します。 
 進行度による違いは特別ありませんが、重症の場合でも血管造影をして、バイパス手術が可能であればできるだけ早くバイパス手術をおこないます。

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バイパス手術後の注意

 生活習慣の改善が第一です。第二は足に傷が無いかどうか、常に注意をしてください。患者さんご自身では、見られない事が多いので、ご家族の協力も重要となります。
 ただ足に傷が無いかどうかを見るだけではなく、ひび割れやたこから始まることも多いので、そういったひび割れやたこのケアも必要となります。
 バイパスは永久的なものではなく、詰まることもあります。 詰まる前の段階で、その原因箇所を修復してやれば、より長期の開存が期待できます。
手術後の定期的検査も重要ですので、病院には必ず通院するように心がけて下さい。



抗血小板薬について

 カテーテルの場合は、再狭窄を予防するため抗血小板剤を処方します。始めは2剤を処方しますが、ある一定の期間を過ぎるとと1剤に減らします。
 バイパス手術に関しては決定的に有効な薬剤というものは現在のところありません。 バイパス手術をした後、抗血小板剤を投与していますが、それはバイパスの開存性が上がることを期待するためと、重症虚血肢のベースである動脈硬化が原因で起こる心臓、脳血管の狭窄を抑制するためです。
 脳や心臓の虚血性疾患を予防するためには抗血小板剤は一生投与することとなります。最初の数ヶ月は2種類、アスピリンとチエノピリジン系を処方します。 この2剤は作用する場所と強さが違います。そのため作用が違う薬剤を2種類飲むという事になります。 
◆副作用について
副作用として出血があります。ですから大きな手術を受けることになった場合服用を中止する必要があります。
ですが、これも抗血小板剤の種類や手術の大小によって対処は異なります。



治療方針について

 基本的には血行再建を第一におこないます。血行再建をおこなうためカテーテル治療、外科的バイパス手術のどちらかを選択します。外科的バイパス手術が成功すれば、カテーテル治療に比べより大量の血流が確保されますから治癒も早くなり、さらに長期成績もよくなります。
 重症虚血肢の場合は第1選択としてカテーテル治療をおこなう場合が多いのですが、カテーテル治療をして、拡張した血管は数ヶ月で詰まる事も多くなります。
 ただ、傷が治癒すれば血管の再狭窄が起こっても傷が再発するとは限らないためカテーテル治療で良いという意見もありますが、 バイパス手術で完治した場合、長期にわたって開存しますので、傷が再度発生しても悪化しにくく、或いはバイパスが開いているため筋肉に行く血流も増えますので運動も可能となります。 そういう意味では、傷が出来る前に歩く事ができていた患者さんは、個々の状態を考慮に入れたうえでバイパス手術の選択を第一に考えます。