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Dr.TOYOAKI MUROHARA's
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室原 豊明 先生

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アンチ・煙草キャンペーン

2011年1月20日

名古屋大学全キャンパス内全面禁煙化へ

平成23年1月5日付で、名古屋大学は全キャンパスの敷地内全面禁煙化に向けて乗り出す方針を打ち出しました。これは国内総合大学では、東北大学に次いで2番目の英断で、画期的なことであります。医学部医学科(鶴舞キャンパス)と保健学科(大幸キャンパス)はすでに敷地内禁煙ですが、4月1日より東山キャンパスも原則全面禁煙、キャンパス内は個人の車の中での喫煙ももちろん禁止です。移行期間中の措置として、東山キャンパス内には喫煙所をいくつか設けるようですが、これも徐々に減らしていく方針とのことです。医療従事者としては、総長の英断に感謝します。

 

■名古屋大学からの通達及び当面の指針については以下のとおりです。
 各タイトルをクリックしていただくとPDFが開きます  (名古屋大学ホームページへリンク)。

2011年1月18日

山手線に乗られる方へ

2011年1月17日(月)の始発より1月23日(日)の終電まで、JR 山手線内モニター画像に「大人の60秒講座」という文字放送のクイズ番組が放送されます。この度、禁煙に関する話題が企画され、その中に「禁煙の日」が取り上げられます。放映場所は全車両のドア上の液晶モニターです。どうぞ皆様禁煙化の啓発にご協力よろしくお願いいたします。

 

ps これは東海道・山陽新幹線でも是非やっていただきたい企画です。



▼図  産業医科大学教授 大和 浩先生のHPから

2010年9月29日

受動喫煙の死者、年間6800人 職場が半数超
全国公共の場所の禁煙化を急げー厚労省研究班 2010年 9月28日(火)

 受動喫煙の害に関する新しいニュースが出ていました。

 

"受動喫煙が原因の肺がんや心筋梗塞で年間約6800人が死亡しているとの推計値を、厚生労働省の研究班が28日発表した。うち職場での受動喫煙が原因とみられるのは約3600人で半数以上を占めた。喫煙による死者は年間約13万人と推計されているが、受動喫煙に関する推計は初めて。
 研究は、喫煙との因果関係が明らかな肺がんと心筋梗塞に絞って実施。国際的な研究や国内の統計に基づき、日本の女性の肺がん死亡の8.1%が受動喫煙によると算出した。同様に、女性の心筋梗塞の9.1%、男性の肺がんの1.3%、男性の心筋梗塞の3.7%が受動喫煙によると推計。これを実際の死者数に当てはめると、女性4582人、男性2221人となった。"

 喫煙者に警鐘を鳴らす、重要な研究成果だと思います。このような研究が日本でも出来て、実際にデータが出るところに感銘しました。
 何点か気づきました。まずこの研究では、「肺がんと心筋梗塞に絞って実施した」とあります。実際は喫煙による疾患やそれによる死亡は、もっと多岐にわたりますので、さらに多くの方が受動喫煙で亡くなっているはずで、そういう意味では、実際よりかなり低い数字で現れているはずです。実際には1万人以上の受動喫煙による死者がいると思われます。
 もう1点は、「女性4582人、男性2221人」というところです。日本では女性の9割弱は非喫煙者ですので、どうしても受動喫煙の害(今回は死亡)は女性の方が受けやすくなります。一刻も早く全国の公共の場所を禁煙にして、女性や子供に優しい社会を築くべきです。
 さらに職場での受動喫煙が問題である、と言う点です。これだけは我々のみではどうしても立ち入れません。企業が自助努力で行う必要があります。最近ある企業で、社員の禁煙外来受診の自己負担分を会社がカバーするといった報道がなされましたが、良い事だと思います。また、熊本市の崇城大学薬学部では、入学者は非喫煙者に限るという条件を出したそうです。画期的で勇敢な提案だと思います。まだ全国のどの医学部もこれは達成出来ていません。

2010年9月18日

公共の場の禁煙条令が、その地区の住民の心臓や肺疾患の発症を抑制した!

 神奈川県で公共の場の禁煙条令が発令され、例えば海水浴場なども全面禁煙化されたことは皆さんもご存知のことと思います。この公共の場所の禁煙化条令は、喫煙者が喫煙しにくくなることはもちろん、非喫煙者の煙への暴露、すなわち「受動喫煙」の機会が減るという大きなメリットがあります。
 この公共の場所での禁煙化は、我々が予想していた以上に病気予防に対してのインパクトが強いことが分かってきました。どういうことかというと、公共の場の完全禁煙によってその環境にいる人たち全体の心筋梗塞などの心臓病発症数が大幅に減少したという驚くべきデータが次々に出てきたのです。
 そして! 本日付けのNew England Journal of Medicine誌には、再び驚くべきデータが発表されました。公共の場の禁煙条令によって、その地区の呼吸器疾患、特に小児ぜんそくによる入院数が減少したというデータが掲載されました。公共の場所の禁煙条令は心疾患、呼吸器疾患の減少にインパクトがあることが証明された訳です。おそらく長い目で見ると、この地区にいる人たちは、肺ガンや膀胱ガンなどの悪性疾患も徐々に減ってくる事でしょう。今回のデータは小児ぜんそくであり、当然非喫煙者ですので、非喫煙者をタバコの煙から守ること(= 受動喫煙防止)がいかに重要であるか、が確認された報告となりました。

 

【文献】
 Mackay D. et al. N Engl J Med. 2010; 363: 1139-1145. (2010年9月16日)
 Pell JP. et al. N Engl J Med. 2008; 359: 482-491. (2008年)
 Meyers DG. et al. J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 1249-1255. (2009年メタ解析)

2010年9月15日

タバコに関する最近のニュースから

 "「タバコは税上げで1箱1000円くらいまでは値上げしてもいい」と、某衆議院議員は語った。タバコ税は10月1日に1本3.5円上がり、300円の商品は410円に値上げされる。超党派議員約70人で作る禁煙推進議員連盟は「来年度以降も値上げを要望、なるべく早く先進国並みの1箱600円まで上げる」と意気込む。健康促進に加え受動喫煙減少、医療費削減、未成年者の喫煙防止、寝たばこ火災抑制など「一石五鳥」の増税メリットを示す。

 ニューヨークでは7月から増税で一部たばこは1箱11ドル(約967円)近くに値上がりした。厚生労働省の資料によるとたばこ1箱はイギリス1008円、オーストラリア734円、フランスは682円だ。たばこ増税に反対意見が多かった自民党から民主党への政権交代や世界的な禁煙の流れで、増税へフォローの風が吹く。

 都内で禁煙外来を設ける某クリニックの先生は、来院者が最近増加していることを示し、「多くは値上げを口実にたばこを止めようとしている喫煙者だ。他人に多大な健康被害を及ぼす受動喫煙も改善する」と歓迎する。ガムメーカーのアンケート調査によれば、増税を機に禁煙しようとしている人の割合は喫煙者全体の69.7%に達する。

 JT株の投資評価を「買い」としているジャパンインベストの某アナリストは、自身が喫煙者であることを断ったうえで「一時的に喫煙を止めようとした人のほとんどは3カ月もすれば再び吸い始めると思う。弁当代を削ってでもたばこ代をねん出してしまうのが喫煙者だ」と話した。その上で「今回の値上げでJTの1本当たり利益は7割以上増えるはずで、イギリスなど海外のたばこ会社は増税のたびに増益となっている」と指摘した。喫煙者が戻ったことが顕在化する来年にはJT株が再評価されると予想した。 "

 問題はこの最後のパラグラフです。喫煙者の中には、いったん禁煙してもまた3ヶ月もすればほとんどのヒトが吸い始めるから、結局は値上げ分タバコ会社の利益が増える、と言っているのです。タバコを吸っているヒトの健康の事など全く無視している、乱暴な発言とみるべきでしょう。某氏が言う「弁当代を削ってでもタバコ代をねん出してしまうのが喫煙者だ」という表現が、まさに「ニコチン依存症」ということになり、これはもはや習慣ではなく病気ですので、一刻も早く禁煙外来での治療が必要になります。舘ひろしさんのCMを思い出して下さい。

2010年2月19日

禁煙しませんか

 人間は正常の空気を吸って生きている哺乳類の一種です。ですから「けむりを肺に吸い込む」という行為そのものが、まずは異質な行動ということになります。ところがどういう訳か、タバコの煙だけは、古くから「吸い込んでも良いという市民権」を得ていたようです。タバコがそもそもこの世に存在しなければそれですむ訳ですが、今の人類全てが、生まれた時からタバコが存在している地球上にいる訳ですから、これは今更どうしようもありませんね。

 さて、なぜタバコの煙が大きな問題になるかというと、一つはニコチンが含まれていてこれが依存症状態を作ること、二つ目はタバコの中に含まれる物質が様々な病気を引き起こす、ということです。吸っているうちは全く自覚が無いと思います。むしろ「食後の一服はうまい」などという快感の方が先立つのではないでしょうか。これはまさにニコチンが脳細胞に働いて、脳に快感を与えているからで、これが「あーまた吸いたい!」という「ニコチン依存症」(タバコ依存状態)を引き起こしてしまいます。さらにそれ以外の物質、たとえばベンツピレンという物質などは、我々の細胞の遺伝子に傷をつけ、肺がんを始め種々の癌を強力に引き起こします。それ以外にも動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中)、肺気腫、気管支喘息、歯牙の異常・早期欠損、胃腸の潰瘍、皮膚病、しわなどを発症/悪化させます。

 こう書きますと、「タバコを吸っていても90歳まで生きる人がいる。」とか、「タバコ以外の病気(高血圧や糖尿病など)でも動脈硬化は起きるじゃないか。」と反論する人がいます。しかし90歳の健常喫煙者1人の影には、30名くらいのタバコで命を落とした人間がいることを忘れないでください。また、確かに他の危険因子でも動脈硬化は起きます。しかしながら、どの危険因子もそうですが、初期は、動脈硬化というものはじわじわと進行し全く自覚症状がありません。糖尿病も、高血圧も、高コレステロールもしかりです。喫煙も最初は自覚症状はありません。ですが困ったことに心筋梗塞や脳卒中は、ある日突然発症することが多いのです。ひどければ外出先で突然死します。最悪なのは脳卒中になって、その後の人生寝たきりになり、周りの人たちに多大な迷惑をかけてしまうことです。冒頭にも言いましたように、喫煙はこれらの危険因子の中でも最悪の因子なのです。さらに喫煙が他の危険因子と重複すると、相乗的に動脈硬化疾患の危険性を増悪させます。

 もう一つの大きな問題は、皆様も何度かは聞いた事があると思いますが、「受動喫煙」です。吸いたくない人、あるいは吸わない人が周囲で吸っている人のタバコの煙を横から受けてしまい、多少なりとも吸ってしまう事です。この横からの煙は、実は大変「たちの悪い」煙なのです。まずフィルターを通っていません。さらにいったん人の肺(いわゆる人間の肺フィルター)を通過している訳でもありません。つまりタバコの煙に含まれているあらゆる物質が、「素」のまま全く吸わない人や、小さなお子さんたちに暴露されてしまうということです。喫煙者自身にしてもそうです。いわゆる喫煙室で吸えば、必ずこの横からの煙を本人も多量に吸い込むことになります。米国モンタナ州のヘレナという所で極めて興味深い研究がなされ、発表されました。それはこの地区で公共の場所を全面禁煙にするという条令を発令したところ、条令の前と後で比較すると、その地区内の救急車で搬入される心筋梗塞の患者さんの数が激減した、というものです。公共の場の禁煙条令ですので、喫煙者はもとより、受動喫煙が多いに減ったと考えられます。この結果心筋梗塞が減るということは、それだけ受動喫煙が大きな問題を抱えているということの証明になります。

 我々医師はタバコを吸っている人を悪いとは思っていません。もちろん喫煙マナーが悪い人は良くないですが。喫煙者はタバコ依存状態から抜け出せないでいるむしろ「タバコの被害者」であると考えています。最近、この被害者(=ニコチン依存症患者)を保険でカバーして治療する事ができるようになりました。アンケートテスト(TDSスコア)で5点以上であれば「ニコチン依存症」と診断でき、他の複数の条件が揃えば、「禁煙外来」の標榜のある病院で保険適応の禁煙治療が可能となります。

平成22年2月22日から、毎月22日が「禁煙デー」になります。詳しくは下のリンク先をご覧ください。
http://www.kinennohi.jp/

2009年10月22日

タバコの値段について

 現在日本は、先進国の中でも、タバコの値段が異常に安いままに「放置」されている国です(図1)。現在財務省より、「平成22年度の税制改正についての意見募集」というのがなされており、私の所属する日本循環器学会や先に述べました「12学会禁煙推進学術ネットワーク」から、「たばこ税値上げに関する要望書」を提出しました。これらの実現により、喫煙率が若干でも低下することを希望しております。またタバコの値段や税額が上がれば、企業収益や政府の税収入も増えますので、皆様方にとって「一石二鳥」ではないでしょうか。国民全体で進めるべき課題だと思います。



▼図1

2009年9月30日

「禁煙推進活動」に関する学術会議に出席しました。

 先日禁煙推進に関する委員会に出席して来ました。個人的には私は多くの身内をタバコに関連した病気(肺がん等)で失っていますので、まさにタバコは「親の敵」状態です。その他にもタバコは多くのがん、心筋梗塞などの冠動脈疾患、閉塞性動脈硬化症、脳卒中、肺気腫、歯科疾患などの重大な危険因子となります。タバコの値段が日本では300円なのに対し、欧米では600円~1000円程度と大きく乖離しており、もう少し日本で値段が高くなれば未成年者の喫煙率などが低くなるのでは、という意見が出ました。また全国の鉄道車両と駅構内の禁煙状況、全国医学部附属病院の禁煙状況、愛知県内の遊園地などの禁煙状況(禁煙度ランキングもあり!)の報告もありました。委員長より毎月22日を禁煙デーにしようという提案がなされ、全会一致で採択されました。由来は白鳥(スワン=吸わん)を横から見ると首から胴にかけて数字の「2」に似ている事から、「吸わん吸わん=22」ということで、毎月22日に制定されました。今後禁煙学術推進ネットワークに加盟している12の医学歯学系学会を皮切りに広く一般にアナウンスして行く予定となりました。