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胸腔鏡下・腹腔鏡下、機能温存手術

投与量を減量した低用量化学療法による外来化学療法

緩和医療における抗癌剤療法

西洋医学と東洋医学の統合



緩和医療における抗がん剤療法

おなか中にがんがひろがってしまったがん性腹膜炎(腹膜転移)を有する患者さんは、残念ながら外科的療法の適応とならないことが多く、このような場合、がんの縮小を目指す化学療法と、さまざまな症状の改善を目指す対症療法が考慮されます。

そうはいっても、腹膜転移の患者さんに対する化学療法は、効果が高いとはいえず、QOLを下げるだけに終わる場合も少なくありませんでした。しかしながら、近年、TS-1、タキサン系薬剤(タキソール、タキソテール)などのように、腹水への良好な移行性を示す薬剤が導入されるに伴い、良好な結果も報告されるようになり従来の概念が変わりつつあります。

これらの薬剤は、副作用も比較的軽度であり、外来加療をつづけることが可能です。そのため、患者さんのQOLを大きく損なうことなく、抗腫瘍効果を発揮し、症状が緩和されることがあります。これまでは、困難であった化学療法と緩和医療の両立が、成り立つこともありうるのです。

全身状態を考え、投与量を減らした患者さんでも、QOLの改善効果がみられる場合がありますので、緩和医療としての意義をたかめるためには、投与方法を柔軟に変更し、副作用を極力おさえる配慮が必要と考えられます。



対象となる患者さん

進行・再発胃がん


治療の様子、実績

症例1
スキラス胃がん術後3年目に腹膜転移確認、TS1療法開始したところ、縮小、大腸狭窄が改善し3年間外来通院することが可能でした。

図6
図7
<図6> 治療前
<図7> 治療後 2年6ヶ月
大腸狭窄部(赤矢印)が拡張しています。

症例2
スキラス胃がんが食道へも広がり、腹膜転移もあり食事をとることがまったくできなかったのですが、ご高齢のため(87歳)手術を行うことも困難でした。TS1開始後、腫瘍が縮小、食道も拡張し、食事摂取再開可能となりました。一時退院され、治療開始後8ヶ月目まで自宅での生活が可能となりました。

図8
図9
<図8> 治療前
<図9> 治療後 3ヶ月
食道狭窄部(赤矢印)が拡張しています。