

冠動脈の一部の血流が完全に途絶え、心筋に血液が流れなくなった状態を心筋梗塞といいます。
血流が途絶えた状態が続くと心臓が壊死し、一度壊死した心筋は元に戻りませんので
一刻を争う危険な状態となり、緊急の治療が必要になります。
原因は狭心症と同じように冠動脈のアテローム性動脈硬化です。

プラークが破裂してできた血栓がまだ小さく血流がわずかにある状態が「不安定狭心症」
血流が大きくて血管を完全にふさいだ状態が「急性心筋梗塞」です。
両方を合わせて「急性冠症候群」と呼ぶ事もあります。

胸が締めつけられ、握りつぶされるような強い胸痛が突然起こり、痛みは数十分から数時間にわたって続きます。
胸の中央が痛みますが、左胸、背中、首、場合によってはみぞおちに痛みが起こることもあります。
壊死を起こした心筋の部位が大きくなると心不全を招きますし、壊死した部分が小さくても心室細動(心室が小刻みにふるえる)や
心室頻拍(脈がとれなくなる)など生命に関わる危険な不整脈が起こる事もあります。
また、高齢者や糖尿病の患者の場合には症状のない無痛性心筋梗塞を起こす事もあります。
心筋梗塞は朝から午前中にかけて起こしやすく、精神的緊張が高まった時に発症する傾向があります。

心筋梗塞は一刻を争う病気ですから専門医のもとで治療を受ける必要があり、
急性心筋梗塞の場合診断と治療が並行して行われます。
発病してから数日は不整脈が起こる危険が高く、通常冠動脈疾患集中治療室(CCU)で治療が行われます。
治療の目的はいったん途絶えた心筋の血流を回復させることです。
血栓溶解療法
カテーテルを冠動脈まで挿入し、血栓を溶かす薬剤を注入して血流を回復させる治療です。
冠動脈形成術
カテーテルを閉塞している冠動脈まで挿入し、バルーンで閉塞している血管を押し拡げてステント(金属製の網状の筒)を 留置する方法などで血流を再開させる治療です。
冠動脈バイパス手術
閉塞している冠動脈を迂回させて血管を作る手術で、大動脈から心筋へ直接血流を流します。
来院して70分以内にカテーテル治療を行うのが理想的です。
心筋梗塞の死亡の危険は発症時が最も高く、いかに早く再灌流療法(血流を再開させる治療)
を行うかにかかっており、カテーテル治療を受けるまでの時間が短ければ短いほど死亡率が下がります。
薬物療法
再発予防のため、血栓ができるのを防ぐ薬や動脈硬化の原因となった脂質異常症治療薬、高圧薬の服用を行います。