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大動脈瘤とは

大動脈瘤という言葉は聞いたことがあると思います。
「東名高速は日本の大動脈」と言われますが、この語源は身体の中の大動脈にあります。
 心臓から出た血液が全身にくまなく回る、この血液を全身に送る血管が大動脈です。
 血液が心臓から出た後、胸に留まっている部分のパイプが胸部大動脈です。横隔膜の下、腹部にあるパイプが腹部大動脈です。
 大動脈は2〜3cmの太い血管で、疲労を起こして少しずつ膨らむという弊害が出てきます。これがある大きさに達すると血圧に耐えることができなくなり、その結果動脈瘤が破裂して出血をして死に至ります。



大動脈瘤は、破裂するまで症状がないことから欧米では「サイレントキラー」、すなわち静かにそっと忍び寄るキラー(生物を殺す人)という表現をされます。
大動脈瘤は、動脈硬化の患者様に発生しやすいといわれています。
心臓や足の血管が動脈硬化を起こした場合は血管が狭くなり、細い血管はさらに狭くなりますが、この太い大動脈においては狭くなるということは稀で、動脈硬化が大血管、大動脈に及ぶと多くの場合は風船のように膨らむ大動脈瘤になります。
大動脈瘤になりやすい人は動脈硬化の危険因子とほとんど同じです。


■大動脈瘤の治療


大動脈瘤は金属疲労を起こして少しずつ膨らんであるとき風船が破れるように決壊する病気ですから、破裂しないようにする治療をおこないます。
大動脈瘤の治療には3つの選択肢があります。
1.内科的治療
2.外科的治療「人工血管置換術」 
3.外科的治療「ステントグラフト術」 

内科的治療には、血圧を下げる等がありますが残念ながらほとんど効果はありません。
したがって、治療は外科的治療が中心となります。外科的治療には従来から行われている「人工血管置換術」、新しい血管内治療である「ステントグラフト手術」の2つから選択されます。
治療法は、動脈瘤の破裂率と患者様の年齢、治療のリスクによって最もよい方法が選択されます。

腹部大動脈瘤

主に動脈硬化等が原因となり、動脈が部分的に瘤状に膨れる病気を動脈瘤と呼びますが、中でも最も多いとされているのが腹部大動脈瘤です。
腹部大動脈の正常直径は約2cm以下とされており、2倍の4cm以上になると腹部大動脈瘤と診断されます。
4対1で男性に多く、高血圧などの危険因子を持っている方の発症頻度は高くなります。


■腹部大動脈瘤の症状


腹部大動脈瘤は、破裂するまで症状がありません。そのため症状がある、症状がない、ということで治療法や治療をするかしないかということを決めることはありません。
治療については、破裂のリスクと手術に伴うリスクのバランスで決められます。破裂リスクは、動脈瘤の大きさと大きくなる速度が重要なポイントとなります。
男性の場合は直径5cm、女性では4.5cmが治療の適応とされています。また、1年間で0.5cm以上拡大するケースも治療の適応となります。
また、お餅のように一方だけ膨らんだタイプ(のう状瘤といいます)は破裂しやすいため、サイズが小さいとしても治療の適応となります。


■腹部大動脈瘤の危険因子


腹部大動脈瘤になりやすい人は、動脈硬化の危険因子とほとんど同じです。
動脈硬化の危険因子としては、喫煙、高脂血症、高血圧、糖尿病、といった生活習慣病の結果が動脈硬化や大動脈瘤ということになります。
また、一番大事な危険因子は高齢です。 どんなにたばこを吸ってどんなに不摂生をしても、30代・40代で動脈硬化や腹部大動脈瘤になるということは極めて稀です。
しかしそういう不摂生を長年続けて60歳以降(いわゆる大動脈瘤年齢)になると、危険な状態になります。
さらには遺伝も危険因子となります。父親か母親が腹部大動脈瘤の場合、そのお子さんが腹部大動脈瘤になる確率はそうでない患者様に比べて5〜10倍くらいの確率です。親族、特に兄弟とか親に腹部大動脈瘤の患者様がいる場合には注意が必要です。
もう1つ、男性と女性という性の違いも危険因子になります。
大動脈瘤は男の病気と言われており、特に腹部大動脈瘤においては大体5:1くらいの割合で男性に多く発生します。
高齢、高血圧、高脂血症、家族歴あり、男性、ということであれば、症状とは関係なく一度検査をすることをおすすめします。


■腹部大動脈瘤の検査方法


現在では、CTが一番正確で一番簡便な方法と思われます。大動脈瘤は発生してすぐに破裂するというほど急速に進行するものではありませんので、 CTの結果大動脈瘤がない方は毎年撮る必要はなく、3年後、5年後を目安に再検査をすればよいと思います。


胸部大動脈瘤



胸の大動脈が瘤状に拡大する病気です。できる場所によって上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤などに分かれます。主な原因は動脈硬化ですが、感染、外傷などによって起こることもあります。
胸部大動脈の正常直径は約2.5cmで、2倍の5cm以上になると胸部大動脈瘤と診断されます。


■胸部大動脈瘤の症状


急激に大きくなる場合には背中の痛みがでることもあります。弓部大動脈瘤では声がかすれた、ものが飲み込みにくくなったりすることもありますが大半は破裂するまで症状はありません。


■胸部大動脈瘤の危険因子


胸部大動脈瘤になりやすい人は、動脈硬化の危険因子とほとんど同じです。
動脈硬化の危険因子としては、喫煙、高脂血症、高血圧、糖尿病、といった生活習慣病の結果が動脈硬化や大動脈瘤ということになります。
また一番大事な危険因子は高齢です。 どんなにたばこを吸ってどんなに不摂生をしても、30代・40代で動脈硬化や胸部大動脈瘤になるということは極めて稀です。
そういう不摂生を長年続けて、60歳以降(いわゆる大動脈瘤年齢)になると危険な状態になります。
さらには遺伝も危険因子となります。 家族で大動脈瘤があり、かつ破裂したという家族歴がある方はご本人も破裂しやすいと言えます。


■胸部大動脈瘤の検査方法


胸部レントゲンやCTで発見されます。特にCTが一番正確で、一番簡便な方法です。


胸腹部大動脈瘤

胸部から腹部まですべての範囲に動脈瘤ができている病気です。
動脈瘤が広範囲にわたり、腎臓の血管を巻き込むことになるため、胸腹部大動脈瘤に対する手術は大動脈手術の中でも最も困難な手術の一つと言われてきました。


※症状、危険因子、検査方法は、腹部大動脈瘤と同じですので、「腹部大動脈瘤について」をご覧ください。

■胸腹部大動脈瘤の治療方法


胸腹部大動脈瘤の治療は、腹部、胸部と同じく3つの選択肢があります。
1.内科的治療
2.外科的治療「人工血管置換術」 
3.外科的治療「ステントグラフト術」 

胸腹部大動脈瘤では瘤が内蔵の血管の枝分かれにまたがっている場合にはステントグラフとは困難とされてきました。そこで、穴あきあるいは枝つきステントグラフトを開発し、これを用いることで治療を可能としました。 ただし、これらの穴あきあるいは枝つきステントは完全カスタムメイドとなっており、発注から納入まで約1-2ヶ月を要し、手術が出来ない症例に限られます。