大木隆生先生のウェブサイト DR.OHKI TAKAO'S WEB SITE

人間の血液は心臓から駆出され、血管を通って全身にくまなく送り出されます。こういった全身の血管の中で、動脈硬化によって狭くなりやすい血管というのはいくつかあります。
1つめは心臓の血管で心臓発作、狭心症を引き起こします。2つめは、首の頸動脈で、脳梗塞を起こします。3つめは腎臓に行く血管、腎動脈で、腎血管性高血圧となり末期になると透析になってしまう弊害があります。
最後に動脈硬化によって詰まりやすい血管は、足につながる血管です。
特に詰まりやすいのは、太ももの部分にある浅大腿動脈という血管です。



足の付け根より下を見ると、血管はひざ、足首を通って足の先々まで張り巡らされていることがわかります。





下肢の動脈に起こる動脈硬化を、閉塞性動脈硬化症(総称して末梢動脈疾患)といいます。
日本でも食生活、生活様式の欧米化、平均寿命の延長による高齢化などにより、
閉塞性動脈硬化症の患者様は増加しています。


■閉塞性動脈硬化症の症状


4段階に分けて考えます。




第二段階において、歩くことができる距離は患者様の症状によってまちまちです。長い人は1km、短い人は10mと、かなりばらつきがあります。
ただし、例えば10mの患者様は常に10mしか歩けませんし、500mの患者様は調子が良いから700m、調子が悪いから300m等の変化はなくて、同じ条件で歩くのであれば可能な歩行距離は一定です。

第三段階では、歩いていないのに痛いという症状が出てきます。この三段階より進行した状態を重症虚血肢と分類していますが、この状態になるとかなり末期の動脈硬化といえます。
血流があまりに乏しく、足の一部が決壊している状態を、第四段階に分類しています。
第三段階、第四段階では、治療をしなければ、半年の間に半分の患者様が膝より下を切断することになります。
一方、第一段階、第二段階の患者様では、足の切断になるリスクは5年間で5%ですから閉塞性動脈硬化症だからと言って全てを同じように判断はできません。
閉塞性動脈硬化症では第一段階、第二段階、第三段階、第四段階で大きく分かれます。
閉塞性動脈硬化症の治療は、詰まっている血管があるためにその先に血流が行かないことが原因であることから、血管の詰まりを解消して血流を潤滑に足へ送る治療になります。



■閉塞性動脈硬化症の危険因子


動脈硬化と同じです。
高齢であること、たばこを吸っていること、高脂血症、高血圧、糖尿病が下肢閉塞性動脈硬化症のリスクファクターです。


■閉塞性動脈硬化症の検査


足の皮膚の色、足の動脈脈拍が触れるかどうかや脈拍数を図る検査が基本となります。
動脈硬化で血管が狭くなっている場合には、脈拍が弱くなったり、触れなくなったりします。
ほかには腕の血圧と脚の血圧の比をはかる検査をします。
上腕・足関節血圧比の低下があり、症状がみられるときは、下肢の動脈の血流の障害を疑います。
画像による検査としては、MRI, CT, 超音波や、カテーテルを使った血管造影などがあります。


■閉塞性動脈硬化症の治療


閉塞性動脈硬化症の治療には、4つの選択肢があります。
1.保存的療法:抗血小板薬などの薬物療法、運動療法
2.バイパス術
3.ステント留置術
4.ステントグラフト術