大山 健一
Kenichi Ohyama
DR.Kenichi Ohyama'S WEB SITE 帝京大学医学部付属病院 脳神経外科 准教授 脳卒中の治療と予防
脳疾患に対する血管内治療

内視鏡下経鼻手術とは

お鼻の穴から内視鏡と手術の道具を入れて、脳の底を下から覗きあげながら手術を行う方法です。

狭くて深い場所にある腫瘍を内視鏡で拡大視しながら手術を行いますので、腫瘍の周囲の構造を適宜確認しながら、安全確実に手術を行うことが可能です。

我々の施設では腫瘍が比較的小さい場合には片側の鼻の穴から内視鏡と手術道具をいれて手術を行います。

この場合、鼻の粘膜切開も最小限で済み、術後の鼻の中の治癒もより早く進み、患者さんの負担がより軽減されると考えています。

腫瘍が大きな場合や、頭の底の側方や下方などのすこし到達が困難な場所に腫瘍がある場合には両側の鼻の穴から内視鏡と手術道具をいれて手術を行います。

この場合には両側の鼻の穴を利用することでより広いスペースを利用した道具の操作が可能になりますので、摘出が困難な腫瘍に対してもより安全かつ確実な操作が可能になります。

 

内視鏡下経鼻手術の適用

下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫などの下垂体部腫瘍の患者さんに対してはほぼ全症例で内視鏡下経鼻手術を行っています。

鼻腔に近い頭の底に存在する髄膜腫や神経鞘腫などの良性腫瘍、あるいは脊索腫などの一部悪性腫瘍に対しても従来の開頭手術の代わりに内視鏡下経鼻手術を積極的に行い、良好な結果を得ています。

 

治療後の生活

通常10 日から2週間程度の入院期間で治療を行っています。

お仕事がお忙しい方の場合には退院の翌日から仕事に復帰されることもあります。

症状がない場合にはリハビリは通常必要ありません。

 

内視鏡下経鼻手術のメリット、デメリット

もともと存在する鼻の中の大きな空間を上手く利用することで、脳を一切触ることなく、脳の最深部に到達することができますので、従来の開頭術に比べると患者さんへ負担がかなり軽減されることになります。

また皮膚切開が必要ありませんので、傷がのこらず、患者さんの整容面においては従来の開頭術に比べて大きなメリットがあると言えます。

デメリットとしては、通常手術用顕微鏡を用いた手術では、術野を立体視しながら手術を行うことが可能ですが、内視鏡の場合は二次元的な映像に基づいて手術を行いますので、慣れないと手術操作が難しくなるということが挙げられます。

このため内視鏡下手術経験の有無がその結果により影響しやすいと言えます。

また頭蓋底腫瘍の手術の場合、手術操作に伴い脳の底に大きな穴が空いてしまうことになり、その再建方法が難しいということも大きな問題です。

経鼻的手術自体は随分以前から行われてはいましたが、術後再建が困難なことがこの手術の発展を妨げていた側面がありました。

我々の手術チームでは深部での硬膜縫合法という特殊な技術や、鼻の中の粘膜を転移させて利用する方法などを用いて確実に閉鎖することを行っており、良好な結果を得ています。

病変に到達するためには、必要に応じて鼻の粘膜を切除する必要があり、術後に鼻血や鼻閉感がでることがありますが、いずれの症状もじきに改善します。