やりがい・ポリシー

日々の診療で心がけていること

患者さんは皆さんお困りになって病院にいらっしゃっていますので、その問題が上手く解決できるようにお力添えできれば良いなと思っています。もちろん医者も万能ではありませんので、全ての患者さん対して完璧なお答えをだせるとは限りませんが、すこしでもそれに近いお答えをだせるように努めています。 また特に手術の場合には平常心で臨めるように心がけています。そのためには術前に手術シミュレーションを行い、さらにカンファランスなどを通して手術チーム全員での十分な検討を行います。

患者さんやご家族と接するときのポリシー

幸い私自身は切り傷に対する縫合処置を何度か受けたくらいで、これまでは運良く大病を患ったことはありません。しかしながら、実は両親に頭の病気があり、患者の家族の立場にはあります。両親ともに私自身が治療方針を決定したうえで治療を行い、おかげさまで現在まで大禍なく過ごしております。このことに関しては脳神経外科医になって本当に良かったと思いました。 そのような経験から、患者さんの家族になった気持ちで、患者さんと患者さんの家族にとって最善と思われる治療方針を提示するように努めています。

医師として先輩や同僚の先生から学んだこと

私が医師になったころは、まだ徒弟制度のような雰囲気がのこっており、まずは“見て学べ“ということが多かったように思います。そのため、手術の助手につく際にはあらかじめ手術方法や解剖を頭に叩き込んでから、手術に臨むようにしていました。それでも最初はなかなか理解できない部分もあるのですが、先輩にご指導いただきながら、少しずつ知識を深め、技術を磨いてくることができました。

幸いこれまで多くの良き師に恵まれ、現在の専門を確立させていただきました。
日本医科大学に在籍中は下垂体疾患診療の世界的な権威でいらっしゃる寺本 明教授(現名誉教授、東京労災病院院長、日本脳神経外科学会前理事長)に師事し、下垂体疾患の診療や研究のイロハから学ばせていただきました。寺本教授は常日頃から「自信を持って診療できる専門領域を確立しなさい」と医局員に叱咤されておりました。その薫陶を受けた結果として現在の専門性を確立することができたのだと切に思っています。

虎の門病院に在籍中は山田 正三部長(現 虎の門病院 副院長 兼 部長)にご指導をいただきました。難治性疾患の患者さんが数多くいらっしゃり、ほぼ毎日のように山田先生と二人三脚で一日中手術をしていました。この際には医療人として日々成長しているなという実感がありました。山田先生には手術の手技のみならず、患者さんとの誠実な接し方などの日常診療面などにおいてもいろいろと学ばせていただきました。
パリ大学のフォリッシュ教授(Prof. Froelich)からも多くのことを学ばせていただきました。研修先のラリボワジエール病院はパリでも最も古い病院の一つで、地上の建物は1800年代に建設された美術館のような美しい佇まいがあり、歴史的建造物として指定をうけていました。しかしながら内部の設備には最新のものが揃えられており、地下3階にある手術室で、フランス全土から集まってくる多くの難治性疾患の患者さんの手術を一緒に担当させていただきました。ほぼ同年代であり、プライベートでは仲良く遊ばせていただきました。一緒にベトナムにご招待いただき、手術デモンストレーションをさせていただく機会もありました。いまでもよく連絡を取り合っています。

現在一緒に診療にあたらせていただいているのが松野 彰教授 (帝京大学脳神経外科 主任教授)です。日本を代表する下垂体疾患診療のエキスパートとして高名な先生ですが、やはり同じく寺本教授からの薫陶をうけられており、私にとっては兄弟子のような存在です。「患者さんにとっての理想的な手術センターを一緒に築きあげましょう」とお誘いをいただき、現職に就任させていただきました。

同僚や後輩などからも、診療や手術技術の面はもちろん、患者さんとの接し方なども含めて、いろいろと学ぶことは多くあります。石井 雄道先生(帝京大学脳神経外科 准教授)は同門の出身で、低侵襲頭蓋底外科手術のエキスパートとして国内外で広く活躍しています。特に頭蓋底再建にこだわりと高い技術をもって取り組んでおり、手術チームの相棒として大変心強い存在です。