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■末梢動脈疾患
末梢動脈疾患というのは、最近の言い方です。
Peripheral Arterial Disease、PADと略します。
日本では、以前はASO、閉塞性動脈硬化症と言っていた疾患です。
日本人には閉塞性動脈硬化症のほかにバージャー病という人の名前のついた病気があり、動脈が詰まってくる病気の二大疾患でした。
ところが欧米では、バージャー病というのはほとんどなく、末梢動脈疾患といえば日本でいうところの閉塞性動脈硬化症を示すというのが一般的です。
PADの好発部位は足の血管で、足の血管に一番できやすい疾患です。
足の血管で動脈硬化が起こってきますと、動脈の壁の中にコレステロールなどを取り込んだ細胞が増え、それが徐々に蓄積してきて、
最後にはこのように血栓がついて内腔を詰めてしまい動脈閉塞にいたるというのがPADの進行パターンです。
◆動脈硬化◆
下の図はその典型的な閉塞性動脈硬化症、病名で言うところのPADですが、左側は正面から、右側は後ろから見たものです。
このように動脈が矢印のところでブツっと切れてしまい足にいく血流が少なくなってくる、これが末梢動脈疾患です。
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■症状について
末梢動脈疾患の多くの場合、無症状なことが多いです。古典的にはフォンテインの分類というのが使われており、
1度は無症状、2度は間欠性跛行、3度は安静時疼痛、4度は潰瘍、壊死となります。
間欠性跛行というのは、歩いていると足が痛くなってきてしばらく休むと数分で良くなる、こういう症状を繰り返す。
つまり、症状が繰り返すものですから間欠性跛行といいます。跛行とは足を引き摺ることです。
これがもう少し重症になってきますと、歩かなくても足が痛くなる、これが安静時疼痛といわれるものです。
さらに酷くなると潰瘍ができたり、壊死ができたりします。
ただ、注意しなくてはいけないのは、このような順番を経て病状が進行するとは限らず人によってはいきなり潰瘍、壊死が発生してくる方もいますし、間欠性跛行のままでずっと長く経過する患者様も大変多いのは事実です。 |
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■検査・診断について
検査としては、まず第一には目で見て、手で足の脈を触れてみるというのが、第一です。
さらに触診をして足の皮膚温に左右差があるかを判断します。
一番簡単で客観的な検査としては、上下肢の血圧の測定です。
手の血圧はよく測ってもらうことがあると思いますが、足の血圧も測ることができます。
足の血圧というのは、手の血圧よりもやや高いのが普通です。
正常値としては、手の血圧を1としますと、足の血圧が0.9〜1.3の間、これが大体正常です。
それより高くても、反対に低くなっても、異常と考えなえればいけません。
このように手と足の血圧を測る道具は自動化されたものが普及しており、こういう機械を揃えたクリニックなども最近多いようです。
おかしいなと思ったら医師に相談して、血圧を測ってもらうというのが、診断の第一歩じゃないかと思います。
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■治療について
内科的な治療と外科的な治療とにわけられます。
内科的な治療の基本は、抗血小板剤と呼ばれる血液の中の血小板という血液の凝固作用をもつものの作用を抑える薬と、
血液の中のコレステロールを下げる薬を使ってコントロールすることにより
動脈硬化の進行をある程度は防げると考えられております。
しかし、それでも進行してしまった病気に関してはカテーテルで動脈を拡げる治療やバイパス手術を行なうというのが一般的な治療となります。
間欠性跛行、歩くと足が痛くなる。このような患者さんは必ずしも手術をする必要はないことが多いです。
こういう患者さんには生活習慣の改善、禁煙の徹底、運動療法をまず試みます。
足が痛くなるまで歩き、痛くなったら休む。そしてまた痛くなるまで歩くということをおよそ1日に30分、週3回以上続けると次第に歩行距離が伸びてきます。
ところが安静時疼痛とか潰瘍とか壊死が起こってくるような重症虚血になった場合、積極的に手術を中心とした血行再建術、バイパス手術が必要になります。
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■予防、治療薬について
予防としては生活習慣の改善をすることが大切です。
糖尿病、喫煙、などが大きな要素になります。
男性である、年を取っている、糖尿病である、煙草を吸う、などが疾患を進行させるファクターとして挙げられます。
性別や年齢は変える事ができませんが、糖尿病を早く見つけてコントロールする、禁煙をするなどが予防につながります。
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抗血小板剤と、コレステロールを下げる薬が疾患治療の2つの柱となります。
薬剤によって治療効果がすぐに望める疾患ではありませんので進行を止める目的での投薬が主になります。
飲み始めたら一生の服薬が必要になる場合が多いです。 |
■症状、注意すべきことについて
末梢動脈疾患は順序だてて進行するのではなく、ある日突然潰瘍や安静時疼痛が発症するケースが多く、
患者様によって進行の仕方は全く異なります。
ただ、比較的軽症の間、簡欠跛行の患者様が足の切断が必要になるまでどんどん病気が進んでいく方は、2%くらいの割合です。
ですから間欠性跛行の患者さんの場合も、正しい生活習慣を身につけ、適切な内服治療を行うということで足がなくなる危険はかなり
小さいものです。ただ、3度、4度の患者様は、大変重症で、生命の危険があることは確かです。
末梢動脈疾患の患者様は他の部位の血管にも疾患がある事が多くなります。
例えば冠動脈という心臓の動脈の疾患、脳の動脈の疾患などにも合併してきます。下図の3つの円が交わったところに入る方は心臓の血管も悪ければ、脳の血管も悪い。さらに末梢の血管も悪いといったような、多方面にわたる血管の病気を持っている患者さまです。
ですから、足の病気、動脈の病気があった場合は、脳や心臓にもある程度のリスクがあるということも認識する事が大切です。
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