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大田 慎三先生

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聴神経腫瘍の電気モニタリング手術について

脳腫瘍に対する開頭手術

脳腫瘍に対する開頭手術は、日進月歩で非常に進歩してきています。
脳腫瘍のみ摘出して正常な脳に損傷を与えない様に努力するのはもちろんですが、脳は非常に弱い臓器であるため脳腫瘍を全部摘出すると脳機能障害を起こす可能性がでてきます。最大限脳腫瘍を摘出して、しかも脳機能をきちんと温存(守る)するために、脳神経モニタリング手術や脳覚醒下手術が開発されています。

特に難しいのは悪性神経膠芽腫と聴神経腫瘍です。

今回は、聴神経腫瘍の電気モニタリング手術について説明します。

聴神経腫瘍の特徴

 聴神経腫瘍は内耳道という耳の一番奥の部位から、脳幹という脳の中心部へとゆっくりと成長する良性腫瘍です。そのほとんどが第8脳神経(聴こえをつかさどる蝸牛神経と、バランスをつかさどる前庭神経で構成)の前庭神経の鞘、つまり神経のカバーの部位から発生します。腫瘍の増大に伴って横を走る蝸牛神経を圧迫するため、聴力障害として見つかることが多かったことから、聴神経腫瘍との名前で呼ばれるようになりました。内耳道には第7脳神経(顔面の動きをつかさどる顔面神経)も走行しているため、腫瘍の圧迫によって顔面神経麻痺を生じることもあります。従って、聴神経腫瘍の摘出手術を行う際には、これらの蝸牛神経と顔面神経の機能を損なうことなく腫瘍を摘出しなくてはなりません。この点が、聴神経腫瘍手術が大変難しい手術だと言われる理由です。特に蝸牛神経は非常に繊細で、直接神経を触っていなくても術後に耳が聞こえにくくなることが少なくありませんでした。

DNAP モニタリングとFREMAP モニタリング

 聴力を温存する聴神経手術を施行している全国の専門施設のほとんどは、聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response : ABR)を手術中の聴力のモニタリングとして使っています。脳幹から発生する微弱な電流を皮膚で感知するため、計測に1分程度も時間がかかることと、聴力が悪い患者さんでは計測できないことが大きな問題点でした。2008年にこれらを克服した新しい聴力の術中モニタリング技術(Dorsal cochlear Nuclei Action Potential : DNAP モニタリング)が考案され、2014年にヨーロッパで、2016年に日本でも使用認可が下りました。当施設は、この新技術を西日本で一番早く導入しました。
DNAP モニタリングの第一人者である、Copenhagen大学耳鼻咽喉科 Corresponding Professor 宮崎日出海先生のご協力のもと、DNAPモニタリングと顔面神経の術中持続モニタリング(Facial nerve Root Elicited Muscle Action Potential : FREMAP モニタリング)も行い、聴力と顔面神経機能の温存手術を積極的に行っています。

 DNAP モニタリングのためには、あらかじめ耳にイヤホンを装着して持続的に音刺激をします。開頭した後、脳幹の中でも音を感知する蝸牛神経背側核(DCN)という部位に特殊なDNAP電極を留置するとDCNからの活動電位を直接測定することができます。続いて、脳幹から顔面神経が出る部位の傍らにFREMAP電極を留置し、顔面神経を1-3秒おきに刺激することで顔面神経機能の変化を監視できるようになります。
手術中は継続してこのDNAPモニタリングとFREMAPモニタリングを行いながら腫瘍摘出を行います。腫瘍の摘出中にこれらの波形が低下した場合には、一旦摘出操作を止める、あるいは腫瘍の中でもそれらの神経から離れた少し違う場所に操作を変えるなど、ダメージを受けた神経を愛護する手術をします。低下した波形が戻ってくるまで30分近く辛抱強く待つこともあります。最新の術中持続神経モニタリングと手術法の工夫によって、顔面神経の機能を温存すること、さらに繊細な聴力をも温存することが可能となったのです。

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