脳出血と脳梗塞

脳梗塞の検査方法について

 脳梗塞の検査方法に関してはMRIという機械があり、脳ドックを行うことである程度脳の血管を見ることができます。この脳ドックで動脈硬化によって細くなった血管や、屈曲蛇行している血管がある程度分かります。昨今は隠れ脳梗塞と言う言葉を耳にするようになりましたが、症状が全く無く、昔のCT検査では見つからなかったとても小さな脳梗塞もMRIで見つけることができるようになってきました。MRIを撮って隠れ脳梗塞が見つかった場合、将来新たな脳梗塞ができる可能性が非常に高いと考えることができます。あるいはMRIで脳の血管に狭窄や、蛇行が酷い血管が発見されると将来血栓性の脳梗塞になる可能性が高いと言えます。

MRI

MRI(クリックすると拡大します)

脳梗塞の治療方法について

 脳梗塞の治療は発症から治療開始までの時間が短ければ短いほど良いと言われています。なぜなら脳の細胞は5分程度血が来ない状態が続くと死んでしまうからです。一般的に手足などの細胞は血液が足りない状態(虚血)に数時間まで耐えられると言われていますが脳の神経細胞は全身の臓器の中で虚血に対して1番弱い細胞のため、発症から治療開始までの時間の早さが予後に大きく影響を及ぼします。例えば発症と同時に治療を開始したとしても5分間で全ての治療を行うことは困難です。それでは脳梗塞に対する治療が無意味なのかというとそうではありません。たとえ脳梗塞を起こした部分の血流が完全に途絶えてしまってもその周辺にはまだ血流の途絶えていない箇所があります。血液が少しでも流れていれば周辺の脳細胞は「十分な血流がないため活動はできないが、完全に途絶えたわけではないのでまだ死んでない」といういわゆる冬眠状態にある可能性があります。その冬眠状態も時間経過と共にどんどんやられて死んでしまいますので、そこの血流を再開通して、少しでも多くの脳細胞を助けるというのが我々の考え方です。

 脳梗塞の治療に今一番使われているのはt-PAという特殊な薬剤を投与する方法です。t-PAには血管に詰まった血の固まりを溶かす作用があります。これを発症から早い時間帯に投与すると6割前後の確率で再開通できます。 再開通が早ければ早いほど冬眠状態であった脳細胞が復活する可能性は高まります。ただしこのt-PAは脳梗塞の発症から4時間半までの患者さんにしか適用されません。これは脳細胞が死んでしまった箇所の血流が再開通すると大出血につながる危険があるためです。

 発症から4時間半が過ぎてしまいt-PAを適用できない患者さんに対しては血管内治療を行います。現在日本では発症から8時間以内の患者さんに適用されます。血管内治療ではカテーテルを足の付け根の血管から脳の中まで通し、特殊な器具で詰まった血栓の回収を行います。t-PAを使用した際の再開通率は約6割程度と言われていますが、血管内治療を行えばそれが8割程度にまであげることができます。ただ、一般的には早い時間帯は確実にt-PAを使うというのが今の日本の常識です。

血管内治療について

 血管内治療はカテーテルという細い管状の特殊な器具を血管に通し、血管の内側から疾患の治療を行う治療法です。脳の手術を行う場合は基本的に頭を切って開く(開頭)必要がありますが、血管内治療であれば開頭することなく、最小限の傷で治療を行うことが可能です。 血管内治療は心臓や足など様々な箇所の治療に適用が可能で脳も例外ではありません。血管内治療で治療を行える脳の病気は様々ありますが、大きく分けると治療法は2つあります。で、1つめは悪くなっている部分を詰めて閉塞してしまう方法。もうひとつは血管の狭窄(細く狭まっていること)している箇所を広げて再開通させる方法です。

コイル塞栓術について

 塞栓術を行う病気として代表的なものが脳動脈瘤です。脳動脈瘤は脳の血管にできた瘤(こぶ)のようなものでその瘤が破裂してしまうとくも膜下出血になります。破裂した場合、あるいは破裂しそうな場合、従来はクリッピング術と言って、瘤があったらその根元を外からクリップで挟んで血流が入らないようにして治していました。コイル塞栓術ではその瘤の中にカテーテルを通して、コイルと言われる非常に柔らかい金属を詰めることで瘤の中をすべて充満させます。そうすることにより血流が瘤の中に入らなくなり出血を防ぐことができます。