治療方法としては不整脈の種類にもよりますが、薬剤治療、カテーテル治療、デバイス治療(ペースメーカやICD)などがあります。
治療の必要がない不整脈もあります。
心房細動の治療方針としては3つあります。
薬物療法で心房細動を元の正常な脈へ戻します。
カテーテル治療により心房細動が起こらないように根治をめざします。
心房細動からの脳卒中を防ぐための治療として抗凝固療法を行います。
また突然死の危険性がある不整脈の場合は、植込み型除細動器(ICD)を体内へ植え込み、不整脈を治療します。
カテーテルとは、血管の中を通すことができる細い管のことをいいます。アブレーションとは焼灼術(焼き切ること)を意味しています。
心房細動の根治治療として有効な治療法です。
アブレーション用カテーテル
カテーテルは太ももの付け根や首などの血管から入れて心臓まで挿入していきます。
不整脈の原因となっている心臓の異常な電気信号を送っている箇所にカテーテルを当てます。
心房細動を起こす部分を正確に診断し、その部分をカテーテルの先からでる50-60度の熱を持った高周波で焼灼します。
一度カテーテルアブレーションで焼いて死んだ心筋細胞には電気が流らなくなります。
悪い箇所を焼くことで異常な電気回路を遮断し、不整脈を起こさなくさせます。
心房細動を引き起こす原因の多くは、左心房にある4本の肺静脈から発生している異常な電気的興奮です。
肺静脈で生じた異常な電気信号が心房に伝わらないよう、下図赤線のように左心房との間を焼いてしまうのが肺静脈隔離術と呼ばれるアブレーション方法です。
右側2本、左側2本の肺静脈と左房の接合部位を広く囲うように焼灼することで 、肺静脈から電気が出ないよう隔離して心房細動が起きないように治療します。
肺静脈隔離術
最近注目されているのが、クライオバルーンアブレーションという治療法です。
カテーテル治療の一種ですが、カテーテルの先にバルーン(風船)がついています。
バルーンカテーテル
バルーンカテーテルを肺静脈の入り口部分までもっていき、バルーンを膨らませます。
バルーンの中に亜酸化窒素を入れることにより、風船と接触した部分の肺静脈組織が-50℃前後で急激に冷やされます。
すると、バルーンの当たっている部分は凍傷の状態になり細胞が壊死し、電気を通さなくなります。
新しい治療方法ですが、当院はすでに導入し、発作性の心房細動の治療に積極的に用いています。
高周波カテーテルアブレーションでは熱で細胞を壊し、クライオバルーンアブレーションでは冷却して細胞を壊します。
高周波のアブレーションは、カテーテルを一箇所ずつ当てていくので時間がかかり、焼きムラができることもあります。
焼き残しや焼きムラがあった場合、その箇所から心房細動が再発する可能性もあります。
クライオバルーンアブレーションでは、風船が当たっている部分の圧力が均一なため、冷却ムラや残しが起こりにくい治療法といえます。
この治療法は従来の方法に比べて合併症が少なく、治療時間も短時間で済みます。
カテーテル治療は局所麻酔で点滴により意識を落とした状態で行われます。
患者さんは遅くとも治療の翌日から歩けるようになり、入院期間は通常は3泊4日、心房細動の場合は4泊5日ほどです。
退院後は普段通りの生活ができます。一週間後には仕事への復帰も可能であり、患者さんの体への負担は極めて少ないといえます。
心房細動のアブレーション治療後は心臓は火傷や凍傷で怪我をして痛んでいる状態です。
したがって心房細動のアブレーション後には、血液をサラサラにする抗凝固薬を3ヶ月程度服用していただきます。
また、心房細動以外のアブレーションでは術後に2週間ほど抗血小板薬を服用していただきます。
合併症の危険性もないとはいえません。
心臓は心膜腔という腔の中にあり密閉されています。
カテーテルでしっかりと焼く場合、心臓にある程度の圧力を加えながらアブレーションします。
心房というのは薄い部分だと2-3mmの厚さしかなく、圧力がかかることにより亀裂が生じて穴があいてしまい、心臓腔の中に出血することがあります。
これは心タンポナーデといわれる合併症の一つです。
その場合は、血液を中和する薬を投与しながら心臓の周りに溜まった血液を抜いて対処します。
カテーテル治療の成功率は年々上がっていますが、発作性の心房細動の場合、治療後に再発する人は1−2割程度います。
その場合、抗不整脈薬を数ヶ月投与し、様子を見た上で、2回目のカテーテル治療の再治療を行うことが可能です。
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