食道アカラシアについて

食道アカラシアとは

食道アカラシアは原因不明の食道の機能異常と考えられている疾患で、食道の蠕動運動(食べ物を運ぶ収縮運動)の障害と食道と胃のつなぎ目の下部食道括約筋の開閉運動の障害により食物の通過が困難になり食道の拡張を生じてきます。
現在においても根本的な治療法はなく、頻度の少ない疾患(10万人あたり1人程度)です。発症年齢は30歳代から50歳代が多いとされていますが、小児の症例も報告されています。

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食道アカラシアの症状

アカラシアの症状の多くは、食べ物が胃に入らず食道内に停滞することによって生じます。つまり感を訴えられる方が多くみられます。病状が進行すると溜まった食物を嘔吐することもあります。
食道の下部で流れが悪いため、次第に食道が拡張してくることが特徴で、食道拡張が著明になってくると食道が蛇行し食事摂取ができなくなってきます。また、症状は精神的ストレスや冷水などで悪化することが特徴とされています。

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食道アカラシアに対する検査

食道アカラシアは、経口食道造影、上部消化管内視鏡検査、CTなどで診断されます。さらに、診断の確定のために、食道の動きや食道の内腔の圧を測定する食道内圧測定検査が行われることがあります。


1)食道造影:
    食道の拡張の程度や下部食道括約筋の状態の観察を行います。


2)上部消化管内視鏡検査:
    食道の拡張や屈曲の程度を観察するとともに、食道の粘膜に異常がないかを調べます。
    また、合併する食道癌の有無についても検索を行います。


3)CT検査:
    食道の拡張の程度を調べるとともに、他疾患の有無について検索を行います。


4)食道内圧測定:
    圧力計が組み込まれたチューブを食道内に入れて、食道内の圧を測定する検査です。
    これにより、食道の圧異常や運動異常が診断され、食道アカラシアの確定診断が可能になります。


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食道アカラシアの治療法

運動機能の低下した食道を回復させることはできません。患者さんの全身状態や年齢などを総合的に判断して治療方針を決定します。
一般的には内科的治療が無効な患者さんに対して外科的治療が行われます。



(1) 内服治療:
    下部食道括約筋の圧低下を目的として様々な薬剤が使用されることがあるが、著明な効果は期待
    できません。
(2) 内視鏡による拡張術:
    内視鏡下に挿入できるバルーン(風船状の器具)を下部食道で膨らませることにより、
    下部食道括約筋を広げ通過を改善することが行われます。
    多くの方では効果は一時的で、再発も多くみられます。
(3) 新しい内視鏡的治療:
    最近では上部消化管内視鏡を用いて、経口的に筋層を切開する治療を行っている施設もあります。
    外科的治療と異なり、体表に傷がつかないことが特徴ですが、行っている施設も少なく一般的では
    ありません。

内科的治療で症状の軽快がみられない方には外科的手術が適応になります。
手術では下部食道の筋肉を直接切開することで、食物がスムーズに胃内に流れ込む様にします(Heller-Dor手術)。
従来はこの手術を開腹で行っていましたが、現在では腹腔鏡で行われることが多くなっており、我々も腹腔鏡下に手術を行っています。




ただし、食道の拡張が著しく蛇行がきついと、手術による治療効果が少ないこともあります。その際には食道を切除することもあります。

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治療の実績

以前より逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアのみならず食道アカラシアを含む食道良性疾患の患者さんに積極的に腹腔鏡下手術を行っており、2016年12月までに62例の食道良性疾患に対する腹腔鏡下手術を経験しております。そのうち、食道アカラシアは18例で、食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎は39例でした。特に食道アカラシアの手術では手術に伴う合併症はなく、術後在院日数も5日と良好な治療成績でした。アカラシアに対しては、近年経口内視鏡による治療が急速に普及し、手術件数は減少しております。しかし、現在でも経口内視鏡による治療は長期の成績が不明であり、標準的な治療は腹腔鏡手術とされています。 食道良性疾患に対する腹腔鏡手術を安定して施行できる経験豊富な外科医は近畿圏でも少なく、施設も限定されます。食道アカラシアや逆流性食道炎を含む食道良性疾患でお悩みの方は、南大阪病院(http://www.minamiosaka.com/gairaitantou/)を受診いただければ、症状改善の一助になりえると考えております。

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