輸血と血液製剤の使用について
輸血は血液中の赤血球、血小板、血漿蛋白などが不足した時その成分を補う治療法で、次の場合、輸血や血液製剤の投与が行われます。
(1)造血機能が低下あるいは傷害され、自分では必要な血液量を十分には造れない。
(2)大量の出血があり、生命の安全に危険が生ずる [下の(3)を含む]。
(3)手術の出血量が一定量を越え、手術の継続困難か術後経過が悪化する恐れ。
(4)それ以外の方法で、組織の接着や止血が困難
輸血や血液製剤の投与を行わない場合の危険性
貧血の強い時や、大量出血時では血液循環が悪くなり脳、心臓、肝臓、腎臓などの生命の維持に重要な臓器の働きに支障をきたします。また、血小板や凝固因子が不足すると出血しやすくまた血が止まらなくなり、同様な病態をきたします。
輸血以外の治療法、自己血輸血、輸血の種類について
(1)増血剤で改善が期待でき、時間的な余裕のある場合はその方法を選べます。
(2)患者さんの病状と術式などにより医師が可能であると判断した場合は、自己血輸血という方法もありますが、進行がんや輸血の可能性の少ない場合は行いません。
(3)上記(1)(2)以外の場合、原則として日本赤十字血液センターから供給されている検査済みの血液(赤血球、血小板、血漿など)を必要最小限の輸血や、血液製剤の投与を行います。
輸血の副作用
アレルギー性の反応として蕁麻疹程度のものから、発熱、溶血性反応(1/12万人位の頻度)、ショック(1/4万人位の頻度)などの重篤な副作用が起こることがあります。まれに輸血血液中のリンパ球により引き起こされる移植片対宿主病(GVHD)という重篤な副作用もありますが(1/60万人位の頻度)、成分輸血と放射線照射により予防策をとっており、減少傾向にあります。
肝炎ウィルス(1/6−18万人位の頻度)やエイズウィルス(1/120万人位の頻度と予想される)などの混入は厳重な検査で除外してありますが、完璧ではなく、また未知の病原体混入の可能性も否定はできません。長期かつ頻回の赤血球輸血は全身の鉄沈着により主要臓器の障害を起こす可能性があります。
血液製剤の副作用
輸血と同じように、アレルギーや蛋白質を介した病原体混入の可能性(狂牛病など)、未知の病原体混入の可能性は否定できません。ウイルス混入のリスクはほとんどないと考えられています。
合併症の予防と治療
輸血や血液製剤の投与は、これらの治療に伴う危険性(副作用)を上回る効果が期待される場合に、同意のもとに行います。副作用防止のため、前もって患者さんの血液型、不規則抗体、血液製剤の交差試験などを行い、放射線照射やフィルターなど可能な予防策をとっています。また副作用発生時には適切に対処いたします。なお、予期できない急な出血、手術中の不測の事態で緊急に輸血や血液製剤の投与を必要とする際は、医師の判断に任せていただくことがあります。