胸腔鏡下食道切除術は、従来大きな開胸創で行っていた食道がん手術を、1cmの穴を数カ所あけて、そこからカメラと様々な手術器具を入れて、直接肉眼で術野をみることなくテレビモニターを通して行う手術です。以前の開胸術では右の胸に30cm以上の大きな傷を作り、肋骨の間を大きく広げて手術を行っていましたが、我々の術式は6箇所に穴をあけて開胸手術と同様の手術を行うというものです。当然、きずが小さいため術後の創痛が軽度で美容上有利であり、術後の生活に関係している呼吸機能の維持が可能であることも特徴です。
また、食道癌の手術ではお腹の手術も必要ですが、我々はこの操作も腹腔鏡下に行っております。最終的には5cm程度の傷が必要になりますが、胸部操作と同様に痛みが少ないことが特徴です。
対象となる患者さん
従来の開胸手術が適応となる患者さんの全てに胸腔鏡下食道切除術を適応しております。ただし、肺の癒着が高度で胸腔鏡を入れることができない方はこの術式は難しいこともありますが、癒着も可能な限り胸腔鏡下にはずし胸腔鏡下に手術を行っております。また、最近では食道癌の治療として手術前に抗癌剤投与や放射線治療を受けられている方も増えてきていますが、このような方でも胸腔鏡下に手術を行う様にしています。
治療の実績
2009年から2016年12月までに230例の食道癌患者さんの手術を経験させていただきました。このうち、胸腔鏡下食道切除術は200例(87%)でした。以前の勤務先である兵庫医科大学上部消化管外科で本術式の導入と安定化に取り組み、2017年1月以降は景岳会 南大阪病院(http://www.minamiosaka.com/)でこれまでの経験に基づき本術式の導入に取り組んでいます。現在でも、本術式の普及と改良について学会発表や論文発表を積極的に行っており、食道癌と診断された患者さんに安心して手術を受けていただけるように努めております。
さらに、最近本邦で増加している逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術にも食道外科専門医として積極的に取り組んでおり、近畿圏でも有数の手術件数となることで安定した治療成績を得ることができております。
▼手技の様子