胃がんに対する標準的な外科治療は現在でも開腹による胃切除とリンパ節郭清です。開腹手術は上腹部に25cm程度の傷ができますが、腹腔内の観察を外科医の目で直接できることと、外科医の手の触感が十分に使えることが利点です。しかし、当然手術創による痛みがあり、活動は制限されます。我々が行っている腹腔鏡下手術は腹腔鏡手術に習熟した外科医が行うと、非常に安定した成績が得られ、リンパ節転移のない状態で外科的治療が適応になる胃がんの方には、術後の創痛も少なく回復も早いため非常によい適応となります。多くの方は胃の下2/3程度を切り取る腹腔鏡下幽門側胃切除が適応となりますが、胃を全て切除する腹腔鏡下胃全摘出術や、胃の上半分程度を切除する腹腔鏡下噴門側胃切除術も安全性に注意しつつ行っております。
対象となる患者さん
主には内視鏡的治療の適応がなく、CTを含めた画像診断でリンパ節ン転移のない患者さんを対象としています。ただし、実際には画像診断でもリンパ節転移の正確な診断は難しく、転移があるか疑わしい場合には腹腔鏡手術を適応することがあります。さらに、手技に習熟した現在では進行した胃がんの患者さんにも適応はしていますが、術前に抗癌剤などの治療が加わった方には適応はしておりません。
手術の様子、実績
現在は年間約40例の腹腔鏡下胃切除術を行い、これまで240例の方の腹腔鏡下胃切除術を経験してきました。今後も安全性を重視しつつ本術式の改良と普及に取り組んで行きます。
▼手技の様子