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内視鏡或いは腹腔鏡手術は、低侵襲手術として様々な疾患において普及しています。甲状腺疾患においても良性腫瘍では普及する兆しがありました。しかし様々な問題点から最近ではむしろ衰退しています。甲状腺癌に至っては殆ど実施されていないのが現状です。問題点として、皮膚切開や内視鏡portの位置が、服で隠れる位置に拘るために、(1)気管周囲や縦隔のリンパ節郭清(central zone)がブラインドとなってリンパ節郭清が困難である。(2)甲状腺周囲のworking spaceが確保しづらい。(3)外側領域(lateral zone)のリンパ節も郭清が困難である。(4)大血管からの突然の出血や視野不良に即時に対応ができない。(5)気管浸潤に対応できない(shaving困難)。(6)内視鏡の器具が、腹腔鏡用であるため使いづらい。(7)鋼線等による吊り上げの問題があるー皮下血腫や準備の大変さ。いずれもかなり重大な問題であり、甲状腺癌での標準化には程遠い状況でした。私共は、独自の小切開手術(MHM法:創は2−3cm)の発展型としてhybrid-typeの内視鏡甲状腺癌手術方法を開発し(the Tori’s method)、2011年4月より希望者にご相談の上、適応しております。適応は「乳頭癌、濾胞癌などの分化癌、および良性腫瘍で大きさが4cm以下」を原則としています。皮膚切開としては、鎖骨の上やや患側よりに僅か1横指(1.5cm)の小襟状切開と患側鎖骨下3cmに5mmのportを加えるのみです(図1)。全摘の場合は、左右対称に同様の創が追加されます(shavingが可能です)。最近では術後半年もすればほぼ創がわからないケースがほとんどであります(図2)。従来手術では、正中を通って8−10cmの襟状の創がつくわけで雲泥の差となります。現在まで術後合併症0を達成しております。(註:現在は小切開MHM法:新Tori法を標準としているため、内視鏡手術を実施する場合には個別相談が必要です。)


図1

図2

Tori法術後写真例




(参考)
・Tori M, Akamatsu H, Yoshidome K, Omori T, Nishida T. Standardization of hybrid-VANS (TORI METHOD) for thyroid differentiated cancer including invasion to the thrachea.2012, 31th SAGES(アメリカ消化器内視鏡外科学会)San Diego, USA
・Hybrid-type endoscopic thyroidectomy (HET: Tori's method) for differentiated thyroid carcinoma including invasion to the trachea. Tori M. Surg Endosc. 2013 Nov 22. [Epub ahead of print]