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膵体尾部がんに対するハンドアシスト腹腔鏡手術(標準化)

膵体尾部腫瘍手術について、通常開腹手術では臍下までの正中切開やL字切開など大きな皮膚切開が必要となります。一方、手術適応としては通常悪性(膵癌)や粘液産生膵腫瘍(IPMN)等良悪性境界例が多いため、Pure腹腔鏡下膵体尾部切除には(1)器械縫合のデメリット、(2)血管処理や膵液瘻予防の問題点、(3)十分なリンパ節郭清が困難、といった問題が伴います。具体的には、(1)断端が器械による切離であるため、断端の良悪性判断がむずかしく、また「閉じしろ」を考えると膵実質を残すことにおいて損をする。(2)器械縫合により断端からの後出血や膵実質挫滅による膵液の漏出(膵液瘻)、(3)必要なリンパ郭清が、視野が不良であったり周囲組織が邪魔になりできない。Hand-assisted laparoscopic surgery (HALS)での膵体尾部切除(HALS-DP)はHALS-portという小切開(7cm)を上腹部正中に設置したうえで、2孔(5mm)portを挿入して施行します(図1)。この方法により上記(1)―(3)の問題点は全て解決されます。浸潤性膵管癌で広範囲に浸潤し、門脈合併切除や十分なリンパ節郭清にも対応できるという点で、膵体尾部切除に最もふさわしい「悪性例を含めた標準術式」となりえると判断しています。創部疼痛も少なく短期間での退院も可能です(図2)。

腹腔鏡下ハンドアシスト膵体尾部切除(HALS―DP)は多数例に施行し、手術関連死亡率0、合併症率0(GradeA膵液瘻除)を達成しています。その成果は全国学会特別演題(シンポジウム、パネルディスカッション)や国際学会等で発表し、2011年アメリカ消化器内視鏡外科学会(SAGES)では優秀演題賞を獲得しています。
*** 膵臓良性腫瘍、脾臓摘出、副腎摘出に対しては、pureLapDP(完全腹腔内DP)など純腹腔鏡手術を多数症例に施行しております(合併症率0)。


(参考)
膵・脾・中下部胆道疾患手術実績(更新)−術後合併症&死亡率0へ
http://www.oph.gr.jp/blog/topics/post-184.html