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病気

治療

手術実績および成績

多くの甲状腺腫瘍(乳頭癌などの悪性腫瘍や良性腫瘍)の症例は標準手術(片葉切除もしくは全摘、亜全摘+リンパ節郭清)が治療の基本となります。甲状腺手術ではしばしば癌の浸潤等により反回神経麻痺による嗄声や嚥下障害、また副甲状腺摘出による低カルシウム血症及び諸症状(痙攣発作等)など術後にQOLの低下を招く場合があります。標準手術は難易度が高いとは必ずしも認識されていませんが、神経や副甲状腺を扱うため様々な程度の合併症が起こり易く、経験豊富で甲状腺外科に精通した医師が手術を担当しなければならないと考えます。

 私どもは顕微鏡や拡大鏡下にマイクロサージェリーを駆使したきめ細かな配慮を致しております。下喉頭神経(反回神経)、上喉頭神経(外枝)は複数アプローチにより術中損傷を回避し、反回神経浸潤のために同神経合併切除症例では、顕微鏡下にて頚神経ワナー反回神経吻合をマイクロサージェリー用非吸収糸で吻合しています。副甲状腺については、癌浸潤がないことを術中病理診断で確認後細切のうえ胸鎖乳突筋内へ自家移植しています。リンパ節郭清は腫瘍の大小等に関わらず、両側central zoneと患側lateral zoneリンパ節郭清を施行しています。組織型や腫瘍数、リンパ節転移の程度からhigh risk群と考えられる症例では亜全摘(or全摘)+両側リンパ節郭清(central+ lateral)を施行しています。

  通常甲状腺癌手術では頸部に8−10cmの創痕が残りますが、私どもが開発した新Tori法=小切開MHM法(muscle hanging maneuver with bidirectional retraction)では2cm程度の左右どちらかの鎖骨上切開で、片葉切除でも全摘でも実施可能なケースがほとんどです。最近ではMHM法を施行する機会が増えています。内視鏡手術におけるポートの5mm創痕が残らないため整容性では遜色ありません。どこの施設でも実施可能な通常の保険診療手術ですが、極めて高度な技能を要するため術者が著しく選択されることに注意が必要です。当科においては現在のところトラブル、合併症0で経過しております。


MHM左葉切除(術後1年)。創はほとんどわからない(約2cm)。

(参考)
機能温存を追求した甲状腺標準手術 〜マイクロサージェリーと自家移植の活用〜
http://www.oph.gr.jp/blog/topics/post-33.html

内分泌・甲状腺疾患手術実績(更新)−術後合併症≒0と内視鏡下甲状腺癌手術(Tori法)
http://www.oph.gr.jp/blog/topics/post-183.html