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虚血性心疾患

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虚血性心疾患の治療

冠動脈インターベンション





■冠動脈インターベンション治療とは


外科手術は全身麻酔で大がかりに行いますので一般的には身体の負担が大きく、すべての方に行うには無理があります。
そこで登場したのが冠動脈インターベンション治療です。メスで身体を開かずに、カテーテルと呼ばれる細い管を用いて血管内から治療を加える方法で、血管内手術とも呼ばれます。
動脈硬化で狭くなった血管を内側から、風船で押し広げたり、たまった『アカ』を削り取ったりすることによって血液の通りを良くします。
近頃は広げたところにステントと呼ばれる金属製の『アミ』(ステントと呼びます)を置いてくる方式が増えています。

バルーン拡張前

バルーン拡張後

ステント


・狭心症に対する冠動脈インターベンション治療の実例

上図:心臓の左脇を養う血管に生じた狭窄をステントを用いて広げた



・リスク、他の選択肢について


危険も、からだの負担も少なくて済む反面、冠動脈インターベンション治療には再狭窄という泣きどころがあります。
これは狭くなった血管を広げることに成功しても、3〜6ヵ月後に再び治療前のような狭い状態に 戻ってしまうことです。
再狭窄しにくくする技術が次々と開発されていますが、現状では3〜5人に1人はもういちど血管が狭くなります。
このリスクを承知した上で、

1.薬物療法
2.冠動脈インターベンション
3.外科手術
のなかから、患者様お一人おひとりの病状に最適の治療法を選択するのが最善といえます。



バルーンカテーテル治療(風船治療)は、身体に大きな傷をつけることなく、 狭くなった冠動脈の血管を内側から拡げるために行う患者様の身体に優しい治療法です。

●バルーンカテーテルによる治療

※クリックで拡大します

(1)動脈硬化で狭くなったところに柔らかい金属のワイヤーを通します。

(2)そのワイヤーに沿わせて先端に風船のついた管を
    持ってきます。

(3)狭い所で圧力をかけて風船を膨らませますと、
    狭い所が押し広げられる形になります。

(4)風船を萎ませて抜き去ります。


これによって血管の通り道が広がり、見かけ上治るという治療法です。



●メリット
この治療法は薬と比較すると患部を直接良くしますので、効果が確実です。
その一方で胸を開いて行う外科手術に比べますと一度行うための危険性が外科手術の10分の1以下ということですので、現在広く行われています。

●デメリット
広げた直後に落盤事故のようにガサッと詰まってしまうという方が100人に1〜2人いらっしゃいます。
その場合には再度同じ治療をしますが、より大きな問題は、一度綺麗に広がったにもかかわらず、3ヶ月から6ヶ月経過すると傷が治るようにシューッと戻ってしまう方がいらっしゃいます。
このような方は3〜4人に1人といわれており、これが非常に大きな問題として残されてきました。




バルーンカテーテルのデメリットである再狭窄を克服する為にできた治療法です。この治療では、バルーンカテーテルで拡げたところに「ステント」と呼ぶ金属の金網を置いて、血管が再度詰まらないようにします。この治療によって、直後に詰まることほとんどなくなり、もう一度狭くなる方も4〜5人に1人まで減らすことができています。




ステントを埋め込んだ後にも残念ながら再狭窄や再治療の必要性を免れることはできません。最近では、これを避ける為にステント留置術がさらに進み、表面に薬剤が塗られたステントが開発されました。これにより、再狭窄を起こす方は 10人に1人以下にまでなりましたのでこのような優れたものを使って治療して差し上げたい、と考えています。

冠動脈ステント留置術、特に薬剤コーティングのステントを使った治療をされた患者様は、基本的には抗血小板薬を続けた方がいいというのが世の趨勢です。これは、動脈硬化の発生自体に血小板が関与しているということが1つと、動脈硬化が成り立って疾患として表に出てしまうところに、やはり血小板が重要な役割を果たしてしまうためです。従って、血小板を常に抑えてあげることによって、動脈硬化の進行もある程度抑えられ、病気になった方でも再発予防という意味でも有効ではないかというのが現在の考え方になっています。ただし、どのようなお薬を、どの期間飲むべきかということについては完全にコンセンサスが得られているわけではありません。飲み続けることによるメリットが多いであろうと一般には考えられています。




中には年月が経つうちに動脈硬化の部分にカルシウムが沈着して石のように硬くなっているという方もいらっしゃいます。そうなるとバルーンでは拡げることが困難で、場合によっては風船の方が負けて破れてしまうこともあります。そのような場合は特殊な器具「ロータブレーター」と呼ばれる器具を用いて、歯医者さんのドリルのような原理で硬いところだけを削りとった上でステント治療を行うという治療法も可能です。当院ではこういった器具について認可がを取得し使えるようになっていますので、患者様個々の病状に合わせて最適の治療法を提供して差し上げたいと思っております。

   ロータブレーター



出典:  山下武廣「くすりと手術の間を埋めるカテーテルインターベンション治療」 
                  北海道医療新聞社発刊 医療と介護ナビ誌2002〜2003年版
 「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス 第3版」トーアエイヨー 企画


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