渡辺 大介
DAISUKE WATANABE
Dr. Daisuke Watanabe’s Web Site 脳血管内治療センター長 / 医長 厚生中央病院

硬膜動静脈瘻について

硬膜動静脈瘻とは

脳は、3層の膜に覆われて頭蓋骨の中に入っています。一番外側(頭蓋骨のすぐ内側)の膜である硬膜は、固有の動脈と静脈を持っています。硬膜動静脈瘻は、硬膜の動脈と硬膜静脈洞が交通して動静脈が短絡された病気です。硬膜動静脈瘻は稀に生まれつき存在していて子供に発症することもありますが、ほとんどは生まれてから何らかのきっかけで形成され、成人以降に発症します。硬膜動静脈瘻は原因不明のことも多いですが、外傷、感染、手術などに関連して形成されるものもあります。日本では年間に300〜400人しか発症しない珍しい病気です。

症状

硬膜動静脈瘻の症状は、その発生部位と動静脈短絡を通って流れる血液の量や方向によって異なります。例えば、拍動性の耳鳴りです。これは動静脈短絡を通る血流による音が、「シュッシュッ」「ザーザー」「ザクッザクッ」など、まさに心臓の鼓動に同期して聞こえます。他には、眼球が突出したり、眼球結膜が充血したり、眼球運動障害(ものが2重に見える)があります。重篤化すると失明する場合があります。どこの発生部位でも静脈洞がつまったり、狭くなったりしていると、脳の静脈に逆流して、脳の循環障害が起こります。その症状は、意識障害、痙攣、麻痺、言語障害、高次機能障害、認知症などが起こり、ひどい場合には、脳内出血やくも膜下出血を発症します。

診断

硬膜動静脈瘻の存在は、造影CTやMRI・MRAでほとんどの場合、確認できます。確定診断のためには、脳血管撮影(カテーテルを用いた検査)が必要です。

治療

脳出血・くも膜下出血、症状を呈する、脳の静脈へ逆流している場合は、治療適応となります。無症状かつ脳の静脈へ動静脈短絡の血液が逆流していなければ治療適応外で定期的にMRI撮影を行い経過観察となります。

治療方法には、血管内治療、外科治療、放射線治療があります。最近では血管内治療の進歩により、ほとんどの場合、血管内治療が第一選択で治療します。血管内治療は、足の付け根の動脈または静脈から細いチューブ(マイクロカテーテル)を動静脈短絡に誘導して、短絡部を閉塞します。閉塞させるために使われる塞栓物質は、コイルと呼ばれる金属がよく使われます。承認された医師のみが使用可能と限定的ではありますが、非接着性の液体塞栓物質であるONYX(オニキス)が2018年に本邦で認可され根治率が向上し、今までの血管内治療では治療困難であった硬膜動静脈瘻が治療可能となっています。治療に伴う主な合併症としては、脳梗塞や脳神経麻痺がありますが、脳血管解剖を分析することにより最小限にすることができます。外科治療と放射線治療は、血管内治療単独では根治できない場合に考慮される治療法です。


Fig.1 Onyx(オニキス)実施医プログラム認定証


Fig.2 左からOnyx18, Onyx34, DMSO

まずはご相談を

硬膜動静脈瘻は珍しい病気であり、治療などについて不安や疑問が多くあると思います。ほとんどが脳血管内治療(カテーテル治療)で治ります。当院では脳血管内治療外来を行っております。脳血管内治療、その他の方法も含め、病態に合わせた最善の治療を提案いたします。まずは外来でご相談ください。