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胃癌:合併症について

  胃がんに限らずあらゆる手術の術後に、望まない不都合な状況が発生することがあります。これを合併症といいます。手術後の合併症には、手術操作とは関連なく発生する肺炎、心臓病、肝機能障害などの一般的(全身的)合併症と手術関連して発生する外科的合併症(出血、縫合不全など)があります。合併症は、医療過誤や過失によるものではなく、同じ医師が同じように注意深く手術をしても一定の割合で発生します。また、患者さんの年齢、全身状態、併存する持病(糖尿病、高血圧、心臓疾患、呼吸器疾患、肝臓疾患など)の影響を大きく受けます。これらの合併症により不幸にして命を落とされる方(手術死亡率)も1%ほどと報告されています。

出血:

胃がん手術の際の術中出血量はがんの部位や進行度、患者さんの状態によって変わりますが、出血量が多い場合には輸血が必要となります。日本赤十字社から安全が確認された血液を必要最小限度のみ輸血させていただきますが、この輸血も100%安全なものとは言えません(輸血の説明書を参照)。また、術中には止血していた部位から、術後に出血が起こって再手術(止血術)が必要となることがあります(再手術を要する頻度は1%以下)。

感染:

胃や腸の中には無数の細菌がおり、これらの菌によりお腹のキズ(創)やおなかの中に膿が溜まることがあります(創感染)。予防的に細菌を殺す薬(抗生物質)を投与していますが、手術後にこれらの細菌がはびこるのを完全に防ぐことはできません。この場合、縫った糸をはずしたり、おなかの中に管を入れたりして膿を出すと治ります。これは手術の5〜10%に合併します。

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縫合不全:

食道断端や胃断端と十二指腸・小腸などを繋ぎ合わせる(吻合する)際には多くの場合、特殊な器械(自動吻合器)を用いて行いますが、この吻合部から内容液(腸液など)が少し漏れることがあります(頻度は食道空腸吻合で5%程度、他の吻合では1%程度)。多くの場合、術中に留置しておいた管(ドレーン)からその内容物や膿が外に出て、絶飲食で縫合不全部が自然治癒するのを待ちますが、どうしても傷がふさがらない時には再手術を要する可能性もあります。

吻合部出血:

つなぎ合わせた腸の縫合部から腸管内に出血することで、出血が続き貧血が進む場合は、内視鏡で止血することがあります。それでも止血しきれない場合には再手術で止血する場合もあります。

通過障害、吻合部狭窄:

吻合部のむくみや腸の動きのぐあいで食べたものがうまく腸に流れて行かないことがまれにあります。多くは術後一過性に生じ、ほとんどは自然に軽快しますが、まれに内視鏡による拡張術などの治療を要することがあります。

膵炎・膵液瘻(ろう):

術中の操作で膵臓を圧迫することや膵臓周囲のリンパ節を郭清することが原因で膵炎を起こしたり、膵液(消化液)が腹腔内に漏れること(膵液瘻)があります。膵液瘻が起こるとドレーンを抜く時期が遅れます。

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癒着による腸閉塞:

おなかの手術をすると、程度は人それぞれ違いがありますが腹腔内の臓器同士が癒着します。この癒着により、腸がつまった状態(腸閉塞)が起きることがあります。排便・排ガスがみられず、嘔吐や腹痛などの症状がみられます。多くの場合、絶食・点滴で治癒しますが、ひどい場合には手術が必要となります。

肺塞栓:

長時間の手術や腹腔鏡による手術は脚の静脈に血のかたまり(血栓)が生じやすく、この血栓が肺動脈に流れて閉塞する疾患です。(頻度は1%以下)。これにより呼吸困難などの症状を呈し、死亡することもあります。予防策として、弾性ストッキングの着用や脚の間欠的空気圧迫法(マッサージ)を行っています。

アレルギー:

手術の際に使用する色々な薬剤が原因でアレルギーを起こすことがあります。ひどい場合には血圧が下がり、手術を延期することもあります(頻度は1%以下)。

肺炎・無気肺:

全身麻酔の影響で術後は痰が増えますが、痛みの影響で痰がうまく出せなかったり、大きな呼吸ができないでいると、無気肺(部分的に肺が膨らまない状態)が起こり肺炎になります。肺炎が悪化すれば、呼吸不全となり人工呼吸器の装着を要することもあります。肺炎を予防するために禁煙を厳守してください。

その他:

上記以外にも腸炎や抗生物質などによる肝機能障害、術後せん妄(痴呆ようなの症状)、さらには成人病のひとつである脳梗塞、心筋梗塞など、ここでは十分な説明ができていない色々な合併症が発生する可能性もあります万一、このような合併症が生じた場合は、詳しく説明させていただいたうえで、できるだけ早く回復されるように最大限の努力いたします。

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