食道がんとは?




食道がんとは?

食道の構造と機能

 食道は、のど(咽頭)と胃の間をつなぐ長さ25cmぐらい、太さ2〜3cm、厚さ約4mmの管状の臓器です。食道の大部分は胸の中、一部は首(約 5cm)、一部は腹部(約2cm)にあります。食道は身体の中心部にあり、胸の上部では気管と背骨の間にあり、下部では心臓、大動脈と肺に囲まれています。  
食道は、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。食物を飲み込むと、筋肉でできた食道の壁が動いて食べ物を胃に送り込みます。食道の出口には、胃内の食物の逆流を防止する機構があります。食道には消化機能はなく、食物の通り道にすぎません。


 ▼食道の構造と機能

 ▼CT検査

食道の構造と機能 CT検査

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食道がんの発生と進行

 食道がんは食道の真ん中〜下1/3に最も多く発生します。がんは食道の内面をおおっている粘膜から発生します。がんが大きくなるとこの粘膜を超えてその外側にある粘膜下層、さらに筋肉の層へと入り込みます。もっと大きくなると食道の壁を貫いて食道の外まで拡がっていきます。食道の周囲には気管・気管支や肺、大動脈、心臓などの非常に重要な臓器が近接しているため、食道壁の外にまで拡がるとすぐにこれらの臓器にも入り込んでいきます。粘膜と粘膜下層に留まるがんは表在がん(粘膜に留まるものは早期がん)と呼んでいますが、筋層にわずかでも入ったものはすべて進行がんと呼ばれます。従って進行がんと言っても、早期がんに近いものから末期がんにいたるまでさまざまな進行程度が存在します。
 

▼食道壁の構造とがんの発育

食道壁の構造とがんの発育

  がん細胞はもともとの場所(原発巣)から生きたまま離れていく性質を持っています。食道壁の中と周囲にはリンパ管や血管が豊富であり、がん細胞はこのリンパ液や血液の流れに入り込んで食道を離れ、食道とは別のところに流れ着いてそこで増えはじめます。これを転移といいます。リンパの流れで転移したがんは、リンパ節にたどり着いてかたまりをつくります。食道のまわりのリンパ節だけではなく、腹部や首のリンパ節に転移をすることもあります。食道がんの患者さんの半数以上の方にリンパ節転移が存在しますが、それほど遠いところの転移でなければ手術で取ることが可能です。 血液の流れに入り込んだがんは、肝臓、肺、骨など全身のあらゆる所に転移しますが、この場合は手術で取ることは不可能となります。  

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食道がんはどのような人がなりやすいの?

  わが国では毎年10,000人以上の方が食道がんにかかります。その頻度は胃がんの1/8です。50歳代以降、加齢とともに急激に増加し、ピークは60歳代で、70歳以上の方が30%以上であり、高齢者が多くかかります。男女比は約6:1と男性に多く、男性では6番目に多いがんです。年間の死亡者数は9,000〜10,000人と全がんの3%を占めます。
 食道がんにかかる原因ははっきりとは特定できませんが、飲酒喫煙をされる方が多くかかるといわれています。50歳以上の男性で、たばこを吸う方、お酒をたくさん飲む方は食道がんにかかる可能性が高くなりますので、内視鏡検査を受けることをお勧めします。しかし、飲酒や喫煙をされない方でも食道がんにかかる人はいます。
 また、食道がんの患者さんは咽頭(のど)や口、喉頭などにもがんができやすいことがわかってきました。

禁煙・禁酒

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必要な検査

 食道がんの診断やがんの拡がりぐあいを調べるためには下記のような検査を行います。また予定する手術を安全に行うために必要な検査として心電図、呼吸機能検査、血液検査、尿検査などを行います。

1)食道造影検査

バリウムを飲んでレントゲンで撮影する検査です。食道がんの存在する位置や狭窄の程度などを判断するうえで重要な検査です。

2)内視鏡検査

 内視鏡検査では、がんの一部を小さくつまみとって、顕微鏡でがん細胞の有無をチェックします(生検組織診断)。がん細胞を顕微鏡で確認して初めてがんと確定診断されます。また内視鏡検査時にルゴール液を食道に散布すると、正常の粘膜は茶褐色に染まりますが、がんの場所は染まらずに白くぬけて見えるため小さながんも発見することができます。但し、ルゴール液を散布した時は胸が熱く感じたり、えずいたりしますので多少の我慢が必要です。

3)CT撮影

 CT(コンピューター断層撮影)は身体の内部を輪切りにしたように見ることができるX線検査です。がんと食道周囲臓器との関係やリンパ節転移や肺、肝臓などの転移を調べるためには最も優れた診断法です。造影剤を注射して撮影するため、アレルギーが出現することがあります。比較的楽な検査です。

4)超音波検査

 超音波検査は腹部や首(頸部)について行います。腹部では肝臓への転移や腹部リンパ節転移の有無などを検索し、頸部では頸部リンパ節転移を検索します。比較的楽な検査です。

5)気管支鏡検査(通常は行いません)

 食道の前にある気管にがんが及んでいるかどうかを調べるために気管の中を内視鏡で見る検査をすることもあります。

6)PET検査(通常は行いません))

 がんは正常細胞よりも活発に増殖するため、そのエネルギーとしてブドウ糖を多く取り込みます。PET検査では放射性ブドウ糖を注射し、その取り込みの分布を撮影することでがんを検出します。食道がんでも進行度診断での有効性が報告されています

進行度

 食道がんの治療法を決めたり、また治療によりどの程度治る可能性があるかを推定する場合、病気の進行の程度をあらわす分類法、つまり進行度分類を使用します。わが国では日本食道疾患研究会の「食道がん取扱い規約」に基づいて進行度分類を行っています。各検査で得られた所見、あるいは手術時の所見により、深達度、リンパ節転移、他の臓器の転移の程度にしたがって病期を決定します。

0期

 がんが粘膜にとどまっており、リンパ節や他の臓器にがんが認められないものです。いわゆる早期がん、初期がんんと呼ばれているがんです。

I(1)期

 がんが粘膜にとどまっているが近くのリンパ節に転移があるものか、粘膜下層まで浸潤しているがリンパ節や他の臓器にがんが認められないものです。

II(2)期

 がんが筋層を越えて食道の壁の外にわずかにがんが出ていると判断された時、あるいは食道のがん病巣のごく近傍に位置するリンパ節のみにがんがあると判断された時、そして他の臓器にがんが認められなければII期に分類されます。

III(3)期

 がんが食道の外に明らかに出ていると判断された時、食道壁にそっているリンパ節か、あるいは食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがあると判断され、他の臓器にがんが認められなければIII期と分類します。

IV(4)期

 がんが食道周囲の臓器におよんでいるか、がんから遠く離れたリンパ節にがんがあると判断された時、あるいは他の臓器にがんが認められたらIV期と分類されます。

食道がんの治療法

 食道がんの治療には大きく分けて、4つの治療法があります。それは、内視鏡治療、手術、放射線治療と抗がん剤治療です。それぞれの治療法には長所と短所があり、どの治療法を選択するかはがんの拡がり具合と身体の状況により違います。これらの治療を組み合わせて行う場合もあります。病気の状態や体力をよく調べてから、十分に説明させていただいたうえで、それぞれの患者さんに一番適した治療法を受けていただきます。ご本人が望まない治療を無理に受けることはありません。

>◆ 内視鏡治療(内視鏡的粘膜切除術 EMR)  ◆

 内視鏡治療は、内視鏡で見ながら食道の内側からがんを含む粘膜を切り取る方法です。この方法を行うにはがんが粘膜までにとどまっていることとリンパ節転移のないことが必要です(ステージ0期)。がんが食道の粘膜の表面(粘膜上皮と粘膜固有層)までにとどまっていればリンパ節転移もほとんどないと言われており、この治療が適応となります。但し、切除した組織を顕微鏡で検査した結果、治療前の診断と異なりがん病巣がより深くに及んでいれば、リンパ節転移が存在する可能性もあり、外科手術や放射線療法(+抗がん剤治療)を追加します。当センターでは消化器内視鏡の専門医がこの治療を行っています。


内視鏡的粘膜切除術(EMR)

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◆ 外科療法  ◆

  手術は身体からがんを切りとってしまう方法で、食道がんに対する現在最も一般的な治療法です。手術ではがんを含め食道を切除します。同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には食物の通る新しい道を再建します。食道は首、胸部、腹部にわたっていて、それぞれの部位によりがんの進行の状況が異なっているので、がんの発生部位によって選択される手術術式が異なります。


・手術の種類


頸部食道がん(首の食道がん)

 手術は身体からがんを切りとってしまう方法で、食道がんに対する現在最も一般的な治療法です。手術ではがんを含め食道を切除します。同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には食物の通る新しい道を再建します。食道は首、胸部、腹部にわたっていて、それぞれの部位によりがんの進行の状況が異なっているので、がんの発生部位によって選択される手術術式が異なります。


胸部食道がん

 手術は以下のように行います。食道は胸の中にあるので、まず胸の手術をします。右の胸からアプローチし、右肺をよけて奥にある食道とまわりのリンパ腺を切り取ります。がんが食道の上の方にあっても下の方にあっても、胸の中の食道は殆ど切り取ります。胸の食道を切り取った後は胃を首まで引き上げて食べ物の通り道を新しく造ります(再建)。このため、胸に続いてお腹の手術を行います。胃の血流を保ちながら胃の周りを切ってぶらぶらにし(胃管作成)、その先端を首まで引き上げます。首にもメスを入れ、のどの下で切り放した食道と胃管を繋ぎます(吻合)。何らかの理由で胃を持ち上げて再建することができない時には大腸や小腸を首まで持ち上げます。胃や大腸、小腸を引き上げる経路は、もとの食道があった心臓の後ろの経路か胸骨の後ろで心臓の前を通る経路のどちらかで、その時の状況により選択されます。胸部食道がんでは、腹部や頸部のリンパ節にも転移をおこすことが多いので、腹部や頸部のリンパ節も郭清します。このように胸部食道がんの手術は胸部、腹部、頸部の操作が必要となるので手術はとても大きなものとなります。手術時間は7時間以内が目安ですが、症例によって異なります。


【食道切除と胃管による再建】


内視鏡的粘膜切除術(EMR)

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【自動縫合器を用いた胃管の作成】


内視鏡的粘膜切除術(EMR)

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<内視鏡下手術(鏡視下手術)>

 従来法では、右胸に20cm、お腹に15cmほどの皮膚切開を加え、さらに肋骨も1本折って手術を行います。しかしながら、当センターでは、最先端の技術により、胸腔鏡下および腹腔鏡下手術にて食道がんの治療を行っています。 胸腔鏡下手術はまず、右胸に直径4cmの穴を開けてテレビカメラを挿入し、胸のなか(胸腔内)をテレビに映します。このテレビ画面を見ながら、さらに直径1cm程度の穴を3個開け、その穴から特殊な手術器具を挿入して、従来法と同じことを行います。腹腔鏡下手術はお腹に6cmの小切開を加え、ここに術者の左手だけを挿入し、テレビ画面を見ながら手術を行います。この手術では傷が小さいため、術後の痛みが少なく、回復も早くなります。ただし、手術そのものには高度な技術が必要となります。 


【内視鏡下手術の実際】

内視鏡下手術の実際

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【手術の創】

手術の創

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腹部食道がん

 腹部食道のがんに対しては、みぞおちからおへそまでの腹部切開と右側または左側の胸部切開を行います。食道の下部と胃の噴門部(入り口に近いところ)を切除し、残った胃を持ち上げてつなぐ方法と、食道の下部と胃の全部を切除し、小腸を持ち上げてつなぐ方法があります。


・手術の合併症

 手術に伴っていろんな困ったこと(合併症)が発生してくる可能性があります。合併症を起こさないように最大限の努力はしていますが、100%安全な手術というのはありえませんので、何卒、御了承ください。以下に起こる可能性のある合併症のいくつかについて述べます。

出血 :食道を切除する際には、多くの血管を切る必要があります。術中出血量はがんの部位や進行度、患者さんの状態によって変わりますが、出血量が多い場合には輸血が必要となります。この際、日本赤十字社から安全が確認された血液を必要最小限度のみ輸血させていただきますが、この輸血は100%安全なものとは言えません(輸血の説明書を参照)。また、術後に出血が起こって再手術(止血術)が必要となることがあります(頻度は1%以下)。

感染・肺炎:どのような手術でも術後に創部や肺などに細菌が増殖して感染症をきたす可能性があります。予防的に抗生物質を投与しますが、食道がんの手術では10%程度の患者さんに肺炎が合併します。これは、(1)開胸手術、(2)喫煙、(3)気管に入る血流や神経の切離、(4)声帯の運動をつかさどる反回神経の損傷による誤嚥など(後述)が原因で肺に痰が貯まって発生します。万一、肺炎がひどくなった場合には一時的にのどを小さく切開し(気管切開)、直接、気管内にチューブを挿入して人工呼吸器をつけることもあります。気管切開すると声が出せなくなりますが、肺炎が良くなってチューブが抜ければ、声は出せるようになるので心配はいりません。
  肺炎を予防するためにまずは禁煙を厳守してください。これが最も大切です!それと手術の前に鼻の中や痰の細菌検査を行い、除菌軟膏を鼻の中に塗っていただきます。また術前後に理学療法士の指導で呼吸の訓練もしていただきます。

縫合不全(繋ぎ目からの漏れ):食道断端と胃管、大腸、小腸などを繋ぎ合わせる(吻合する)際には器械を用いたり手で縫ったりしますが、この吻合部から内容液が少し漏れる(縫合不全)ことがあります(頻度は2%程度)。このような時には多くの場合、絶飲食で縫合不全部が自然治癒するのを待ちますが、これにより入院期間が長くなります。また、どうしても傷が治らない時には再手術の可能性もあります。この縫合不全が起こる確率は糖尿病患者さんや化学放射線療法後の患者さんでは高くなります。

反回神経麻痺:声帯の運動をつかさどる反回神経の周囲にはリンパ節転移が起こりやすく、これを取ることにより反回神経が麻痺することがあります。症状としては声がれが起こります(10%程度)。多くの場合は数か月で治りますが、長引くこともあります。また、反回神経麻痺がひどいと誤嚥(食べ物が気管に入ること)が起こり、これが肺炎の原因となります。

術後せん妄:食道がんの手術ならびに術後は患者さんにとってかなりのストレスとなります。これが原因で、術後せん妄(ボケに近い症状)が起こることがあります。ひどくなれば、やむを得ず、身体をベルトで固定しなければいけないこともあります。これを防ぐには、術後はしんどくても、昼は起きて夜に寝るという一日のリズムを崩さないことが大切です。

吻合部狭窄:食道断端と胃管などとの吻合部は術後しばらくしてから、徐々に狭くなり食べ物の通りが悪くなることがあります。多くは退院後に起こります。このようなことが起こった場合は胃カメラで見ながら狭いところに特殊な風船を挿入して膨らませることにより通りを良くする治療(ブジー)を行います。入院する必要ありません。

乳び胸:食道のすぐ横に胸管という最も太いリンパ管が走っています。この胸管は下半身のリンパ液を集めて左の鎖骨の下にある静脈に合流します。食道がんの手術では、この胸管の枝が切れて術後に乳び(腸管からの脂肪球を含むリンパ球)が多量に漏れることがあります。通常は自然に止まるのを待ちますが、稀に再手術(胸管結紮術)が必要となることもあります。

アレルギー:手術の際に使用する色々な薬剤が原因でアレルギーを起こすことがあります。非常に稀ですが、アレルギーにより血圧が下がり、手術を中止することもあります。

肺塞栓:長時間の手術や腹腔鏡による手術は脚の静脈に血のかたまり(血栓)が生じやすく、この血栓が肺動脈に流れて閉塞する疾患です。これにより呼吸困難などの症状を呈し、死亡することもあります。予防策として足の間欠的空気圧迫法を行っていますが完全に予防することはできません(頻度は1%以下)。

その他:上記以外にも腸閉塞や抗生剤投与などによる肝機能障害、さらに成人病のひとつである脳梗塞心筋梗塞など、ここでは十分な説明ができていない色々な合併症が発生する可能性もあります。これらの合併症が原因で死亡に至る可能性もゼロではありません(1-2%)。この合併症の発生率は、手術前に他の臓器に障害をもっている人や化学放射線療法後の患者さんでは高くなります。

  万一、このような合併症が起こった場合は、詳しく説明したうえで、できるだけ早く回復されるように最大限の努力をさせていただきます。


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・手術後の経過

 全体の流れ:手術が終わったら、多くの場合、気管内挿管(全身麻酔をかけるためにチューブを気管内に挿入します)したまま集中治療室(ICU)またはHCUに入ります。患者さんは呼吸状態がよければ当日夜に目を覚まし、気管内のチューブが抜かれると声が出せるようになります。翌日より座ることが可能です。ICUに入室された患者さんも問題がなければ、数日後にすみれ12階病棟(HCU)に移動します。HCUでも順調に経過すれば、術後1週間以内にもとの病棟に戻ります。このころには歩行もできるようになります。術後1週間経てば飲水、食事も開始となり、早ければ2週間で退院可能な状態となります。術後3週間以内に退院することを目標としてください。



ドレーンなど:手術後は身体にいろいろなチューブが入っています(手術のページを参照してください)。術後数日経過すると腹部のドレーン、鼻のチューブ、頸部のドレーン(初めからないこともあります)などが抜けるので動きやすくなると思います。酸素のチューブも呼吸状態がよくなればはずれます。胸のドレーンも量が少なければ1週間以内に抜けます。創を閉じているホッチキスは1週間で外します。食事がうまく取れるようになれば点滴も必要なくなります。腸に入った栄養チューブは3週間過ぎないと抜けませんので多くの場合は退院後に外来で抜くこととなります。退院時にこのチューブが入ったままでも全く問題はありません。

食事開始:手術後約1週間は飲水や食事ができません。食事が食べられるようになるまでは、手術中に小腸に挿入した栄養チューブと点滴より水分と栄養を補います。順調に経過すると術後1週間で飲水できるようになります。これと同じ頃に頸部食道と胃をつないだ部分がうまくつながっているかどうかをレントゲンに写る薬を飲んでもらって検査をします。これで問題がなければペースト食から開始し、徐々に食事内容をアップさせていきます。



創の痛み:手術の後は傷が痛みます。痛みをやわらげるために、手術直前に背中から背骨にある硬膜外というところへチューブを挿入し、術後はここより麻酔薬を持続的に注入します(硬膜外麻酔)。これでも痛ければ痛み止めの薬(座薬や注射)を使用します。薬の効き方には個人差があります。痛み止めを使うことの悪影響はほとんどなく、痛みのために深呼吸や咳払いがうまくできなくて肺炎になることのほうがかえって問題です。痛み止めを十分に使って痛みをおさえ、可能なかぎり体を動かして深呼吸や咳払いをして肺炎を防ぐことが最も大切です。


退院後の食事摂取:食道がんの手術を受けると手術する前と同じような食べ方はできません。一度に多くの量を食べられないことも多く、食事が喉(吻合部)で少しひっかかるような感じがすることもあります。慣れるまでは時間をかけて少しずつ食べるようにし、一日の食事回数を5〜6回に増やしてください。また、食後すぐに横になると胃管から口の中へ食べ物が逆流してくることがあります。食後30分は横にならないようにしましょう。一日の食事摂取量が十分でない時は濃厚流動食でカロリーを補給してください。


退院後:退院された後は定期的に外来で診察や検査を受けていただき、再発がないかどうかをチェックします。いくら手術で取り切れたように見えても、目に見えないがん細胞が残っている可能性があり、これが再び増えると再発ということになります。再発をできる少なくするために抗がん剤や放射線の治療(後述)を受けて頂くこともあります。但し、術後に抗がん剤の治療を点滴で行う場合にはその期間(およそ1か月間)のみ当センターに関連した病院に転院して頂いて行うこととなります。

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■化学療法(抗がん剤治療)

 抗がん剤治療はがん細胞を殺す薬を注射します。抗がん剤は血液の流れに乗って手術では切りとれないところや放射線を当てられないところにも、全身に行き渡ります。肝臓や肺などにがんが転移している場合や手術前の治療、術後の再発予防として行われます。入院が必要な場合は関連の病院で受けて頂くこもあります。


・化学療法単独で行う場合

 抗がん剤治療は、何種類かの薬を組み合わせて使うほうがよく効きます。抗がん剤として現在、フルオロウラシルシスプラチン(またはネダプラチン)の併用療法が最もよく使われています。フルオロウラシルは点滴の中に混ぜて4〜5日間続けて注射します。シスプラチンは第一日目に投与しますが、腎臓の障害を防ぐために一日に2,500〜3,000mlの点滴を同時に行います。この治療は入院が必要です。これが1回分の治療で、3週間ほどの休みをおいてもう1回行い、効果があればさらに繰り返します。副作用の程度によっては途中で中止することもあります。効果がない場合は別の抗がん剤に切り替えます。最近では、ドセタキセルを組み合わせた併用療法も行われています。


・抗がん剤の副作用

 最も注意が必要な副作用は血を作っている骨髄というところが抗がん剤によって障害され、白血球、赤血球、血小板が減少します。白血球が減少すると(軽症も含めて頻度は40-50%)感染に対する抵抗力が低下し、肺炎などを引き起こします。赤血球減少は貧血、血小板減少(軽症も含めて頻度は40-50%)は出血しやすくなります。但し、抗がん剤投与中は定期的に血液検査を行い、これらの副作用が強く現れる前に抗がん剤を中止して血球減少に対する治療を行うため大きなトラブルはほとんど起こっていません。その他の副作用としては口内炎、はき気、食欲不振、全身倦怠感、下痢、手足のあれ、シミなどが認められることがあります。タキソテールでは脱毛も出現することがあります。これらの副作用の程度には個人差があり、実際には投与してみないとわかりません。また、効果と副作用は比例するものではなく、副作用がないのに非常に効果がある場合もあれば副作用ばかり強くて効果が少ない場合もあります。

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■化学放射線療法

 放射線治療は単独で行うより抗がん剤と併用する(化学放射線療法)ほうが効果が高いため、通常は化学放射線療法として行われています。放射線は身体のどこにでも当てられるわけではなく、肺や肝臓などへの転移が存在すればこの治療の適応にはなりません。化学放射線療法を行うのは、がんが気管や大動脈などに浸潤して手術では取りきれない場合、手術をのりきれるだけの体力がない場合、手術を望まない場合や術後に再発を予防する目的で行います。この治療により7〜8割の患者さんでがんの大きさが半分以下になります。限られた施設では手術よりも化学放射線療法を第一選択としているところもあります。


・化学放射線療法の実際

 放射線療法の1回の治療は準備も含めて30分以内に終わります。一週間に5回照射し、術前化学放射線療法として行う場合は約4週間、化学放射線療法で根治を目指す場合は6〜7週間行います。抗がん剤治投与は放射線治療と同時期に行います。

・放射線療法の副作用

 放射線療法の副作用としては、のどの痛みや乾き、飲み込む時の違和感、疼痛、声のかすれ、照射部(首と胸)の皮膚の日焼け様症状などが出てきます。その他に身体のだるさ、食欲低下といった症状を訴える方もいます。化学放射線療法の副作用は抗がん剤の副作用と放射線の副作用の両方が出現します。特に白血球減少や血小板減少などの骨髄抑制がより強く起こり、治療の途中で治療を中止することもあります。但し、治療が途中で中止となった場合でも十分な効果が得られることもあり、心配はいりません。

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■ステント治療

 がんによって食道の内腔が狭くなり食べ物が通らなくなった場合に、金属の網でできたパイプ状のもの(金属ステント)を食道の中に留置して食物が通過できるようにする方法です。がんの進行で食道に穴があいて食物が外に漏れて肺炎などをおこす場合にも、穴をおおうためにもこのステントを挿入することがあります。方法はまず、レントゲン室にて胃カメラを用いながら特殊な風船を膨らませて狭窄部を一時的に広げます。次に細く縮こませたステントを挿入し、レントゲンで確認しながらこれを広げていきます。処置時間はだいたい1時間以内でその間は静脈麻酔薬を注射しますが、全身麻酔ではありませんので時に苦痛を伴うこともあります。また、稀に誤嚥をおこして肺炎になることがあります。問題がなければ翌日より水を飲むことができ、数日で食事も食べられるようになります。ステントが広がると胸の痛みを感じることがありますが、鎮痛剤で対応します。
  また、食道がんが気管に浸潤することによって気管が狭くなることがあります。気管の狭窄は窒息を引き起こすので、この場合も気管の狭窄部に上述の金属ステントを挿入します。場合によってはシリコン性ステントを挿入することがありますが、これは手術室で全身麻酔をかけて行います。
  ステントを留置したことによるトラブルはそれほど多くありませんが、ステントの位置がずれたり、再び狭くなってもう1本ステントを挿入しないといけない場合もあります。また寝た時に食べたものが逆流して吐いたりすることがあります。ステントを入れた後に化学放射線療法を行うと食道に穴があく場合があるため当院では行っていません。


ステント治療

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治療後の通院

 治療が終了して退院された後は、定期的に当科の外来に通院していただきます。退院してしばらくの間は2週間に1回程度の間隔です。外来で経過を観察しながら、いろいろな検査も受けて頂き、再発がないかどうかをチェックしていきます。検査や次の診察日についてはその都度、説明させて頂きます。再発もなくからだの調子も良好な場合は、診察の間隔は3〜6ヶ月に1回程度となります。調子が悪くて入院が必要な場合は、特殊な治療が必要なければ関連の病院に入院していただくことになります。

=参考 資料・文献=
◇ 大阪市立総合医療センター 消化器外科  患者さん用説明書
◇国立がんセンターホームページ

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