胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術



 この手術は、へそに穴を開け、そこから腹腔鏡というカメラをお腹の中に挿入します。テレビモニターにお腹の中が映し出されますので、さらに5mm~12mmの穴を4か所開けて特殊な手術器具を挿入し、がんを含めて胃を切除するとともに周囲のリンパ組織を郭清(掃除)します。進行がんでは早期がんよりも広範囲に郭清を行う必要があるため、技術的にも難しくなります。切除された胃はへその創を少し広げて、そこから取り出します。創あとはへそのなかに隠れるため目立たなくなります。胃を切除した後に食べ物の通り道を作り直す(再建)必要がありますが、これも腹腔鏡下に行います。
腹腔鏡下手術は、創が小さいので術後の痛みが少なく、患者さんにやさしい手術といえます。手術時間は従来の開腹手術よりも長くなりますが、出血量は非常に少なく、通常50ml以下です。
術後は、手術翌日より歩行が可能です。幽門側胃切除術の場合、術後2日目より飲水を開始、術後3日目より食事を開始します。胃全摘術や噴門側胃切除術の場合、術後3日目より飲水を開始、術後4日目より食事を開始します。術後経過が良好であれば術後7日以内で退院が可能で、退院後の運動制限はまったくありません。

手術中の風景01
手術中の風景02
 

対象となる患者さん

腹腔鏡下胃切除術は新しい手術方法であるため、2010年に改訂された胃癌治療ガイドライン第3版(日本胃癌学会/編)では“リンパ節転移が軽度である早期胃がん”に対する臨床研究の一方法として位置づけられていました。その後、臨床試験で早期胃がんに対する腹腔鏡手術の安全性が確認され、2018年の第5版ではステージ1の胃がんに対しては腹腔鏡下胃切除術は奨励される術式となっています。しかしながら進行胃がんに対する標準術式は未だに開腹手術です。
 当センターでは進行胃がんに対する腹腔鏡手術の適応を長い時間をかけて少しずつ拡大してきました。腹腔鏡手術の技術を磨き経験を積むことで、進行胃がんに対しても開腹手術に比べてより繊細でかつ確実な手術が行えると確信し、現在ではほぼ全例を腹腔鏡下に行っています。治療成績も良好です。しかしながら全国的には進行胃がんに対する標準術式はあくまでも開腹手術であるため、患者さんには十分な説明を行い、承諾を得たうえでこの手術を行っています。
 胃がん手術の術式で最も多いのは幽門側胃切除術ですが、その他、胃全摘術、噴門側胃切除術さらには下部食道合併切除や他臓器合併切除に対しても腹腔鏡下手術で行っています。また、進行胃がんに対しては術前化学療法を行うことも多く、この場合でも腹腔鏡下に行っています。

 
実績

 日本赤十字社和歌山医療センターの年間胃がん切除数は約130件で、ほぼ全例を腹腔鏡下に行っています。

 
実際の手術画像

 注)ここから先のページでは、実際の手術画像をご覧いただくことができます。このような画像で気分が悪くなる可能性のある方はお気をつけください。

 

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