胃上部のがんに対する新しい術式(SOFY法)

胃全摘ではなく胃を残せることが多くなりました

 近年、食道と胃の境界部に発生するがん(食道胃接合部がん)など胃の上部に発生するがんが増えてきています。従来まではこれらの症例に対して多くの施設が胃全摘術を行っていました。胃の上部のがんなので胃の下部(幽門側)を残して食道と残った胃をつなげば(噴門側胃切除術)良いように思われるかもしれません。しかしながら本来、食道と胃の境界部には逆流防止機能が備わっており、胃に入った食べ物は食道に戻らないようになっています。噴門側胃切除を行って単純に食道と残胃を吻合すると逆流防止機能がなくなるため術後に強い逆流性食道炎が起こり、胸焼けが強くて食事が食べられなくなります。このようなことから以前は噴門側胃切除術ではなく胃全摘術が選択される傾向にありました。
 また、胃がんの手術では胃の周囲のリンパ節を掃除すること(リンパ節郭清)が重要ですが、胃の上部のがんに対しても胃の下部(幽門側)のリンパ節郭清を行うために胃全摘術が行われていました。
 2013年の全国調査により、食道胃接合部がんにおいて幽門側のリンパ節郭清は不要であることがわかり、胃全摘ではなく噴門側胃切除が妥当な術式と考えられるようになりました。このような背景からわれわれは噴門側胃切除後の再建として独自の食道残胃吻合法(SOFY法;ソフィー法)を考案し、積極的に腹腔鏡下噴門側胃切除術またはロボット支援下噴門側胃切除術を行っています。このSOFY法は上述の逆流性食道炎が起こりにくく、食事摂取も胃全摘術と比べて非常に良好で、患者さんの術後の生活の質(QOL)が向上しています。

1.SOFY法の手術手技



図1: 噴門側の胃を切除した後、残胃を引き上げて横隔膜に縫合固定します。食道と残胃は5cm程度重なるようにして食道右下端とそれに一致する残胃前壁に小孔を開けます。



図2 小孔にリニアステイプラー(自動縫合器)を挿入し、食道を90度反時計回りに回転させて食道の右側壁と胃前壁を吻合します。



図3 リニアステイプラーを挿入した孔は縫合閉鎖します。続いて食道の左側壁ならびに食道下端を胃壁に貼り付けるように縫合固定します。



図4 SOFY法の逆流防止機構:食道が背側にある胃からの圧によって扁平に圧迫されるため、食物は胃に入りますが、胃内容物は食道に逆流しません。





2.術後造影検査





 造影を飲んでもらって食道と残胃を撮影しました。造影剤は食道から残胃にスムーズに流れます(左写真)。その後、臥位になってもらうと胃にある造影剤は胃の上部に貯まります 。



3.食道胃接合部がんに対するSOFY法再建

 食道と胃の境界部に発生したがん(食道胃接合部がん)の場合は食道も一部切除する必要があります。残った食道は胸の中(胸腔内)に入ってしまうため、胸の中で食道と残胃を吻合しなければならず手術は難しくなります。このような場合でも腹腔鏡手術やロボット手術で腹部から横隔膜を超えて胸の中で手術操作を行い(経食道裂孔的アプローチといいます)、SOFY法による再建を行うことが可能です。





下部食道切除+噴門側胃切除術
    腹腔内から横隔膜を超えて胸の中が見えています。 (は手術創)


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