矢野大仁先生のウェブサイト

摘出術の手技 解説5

ところでそれでも、術後の手足の動きに問題はないか、手術しながら術者も気が気じゃありません。
この問題を克服するために、私たちは頭皮上からの電気刺激で脳の運動野(手足を動かす命令をだすところ)を電気刺激して、手足の筋電図がでるかどうかをチェックしています。
これを術中MEP(運動誘発電位)(図5)といいます。筋電図がでていれば、脳内の錐体路は傷ついていないと概ね推定されます。もし完全に錐体路を断絶したら理論的にも筋電図は波形を示さなくなってしまいます。
先に説明しましたトラクトグラフィで得た情報をもとに、その近くまで手術操作が及んだことをナビゲーションシステムで確認したら、このMEPの出番です。
筋電図の波形の高さに変化がないかにも注意を払いながら、注意深く黄色の部分(フルオレサイトで染まった腫瘍)を摘出して行き、安全な範囲で最大限の摘出を目指します。

▼図5


MEP(運動誘発電位)の画面です。見ている波形は手足に貼り付けた電極から得られる筋電図です。これは頭皮上から脳の運動領域を電気刺激したときに、命令が手足に伝わり筋肉が動くときの波形です。この波形がでていれば、手術中に錐体路は概ね傷ついていないと判断できます。


術中にMRIを撮影できる病院もありますが、残念ながら当院にはありません。
設置導入にはかなりの費用がかかるため、これが導入されているのは国内でも数施設だけです。
手術室そのものにMRIがあるため、どれくらい腫瘍の摘出ができたかを術中に把握でき、取り残しがあれば引き続いて手術が続行出来るわけであり、摘出率を高めることが可能です。



←脳腫瘍 摘出術 解説4へ

*本サイト内のコンテンツは全て患者様もしくはご家族の承諾を得て掲載しています。