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脳梗塞

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はじめに

脳梗塞には3つのタイプがあります。
脳内の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、脳や首の動脈硬化に血栓が出来て起きる「アテローム血栓性脳梗塞」、そして心臓内に出来た血のかたまりが脳に飛んで起きる「心原性脳梗塞」です。これらは治療法が違うため、区別して診断することが必要です。

症状

顔面の左右差、上肢麻痺(片方の手が上がらない、下がる)、言葉が話しにくい、などが代表的な症状です。ただし、他にも半身のしびれや目の見にくさ、物が二重に見えるなど様々な症状が出ます。
脳梗塞を起こした場合にはこういった症状が続くことが多いのですが、一旦症状が出て、すぐに戻ってしまうことがあります。症状が戻るため安心しがちですが、この一時的な症状は一過性脳虚血発作(TIA: transient ischemic attack)と呼ばれており、脳梗塞の前触れであることが多いため注意が必要です。

診断

頭部CT、頭部MRI

CTやMRIは脳の輪切りを撮影する検査です。CTはレントゲン、MRIは磁石を原理にしています。基本的には横になっているだけで診断が可能です。脳梗塞の発症直後はMRIの方がCTより明確に病変を写し出すことができます。

  • 頭部CT

    発症直後のCTでは、脳梗塞を認めません。

  • 頭部MRI

    MRI (拡散強調画像)では、大きな脳梗塞がはっきりと認められます。

MR血管造影検査(MRA)、CTアンギオ(CTA)

さらに詳しい検査法として、脳や首の血管だけを抜き出して画像化することが可能です。CTの場合には造影剤を点滴しながら行いますが、MRの場合には不要です。これらの検査により血管の詰まっている部分や細くなっている部分を診断することができます。

  • MRA

    MRAは一般的にCTAより画質が落ちますが造影剤なしで図のような画像が得られます。本例では矢印の部分に脳動脈の閉塞を認めます。

  • CTA

    CTAでは立体的な画像が得られます。
    このCTAでは矢印の部分で中大脳動脈分枝閉塞を認めます。

脳血管撮影(脳血管造影)

脳血管撮影はCTやMRIの結果、異常が疑われる場合に最終診断として行われる検査法です。
足の付け根や、肘の内側、または手首からカテーテル (細い管)を入れて、そこから造影剤を注入して行う検査法です。
カテーテルを目的の血管に入れる操作にわずかにリスクがありますが、最も確実な診断法です。
3次元撮影によって、コンピューター上で自由に回転させながら目的の血管を詳細に観察することが可能です。

  • 矢印の部分で中大脳動脈の閉塞を認めます。

  • 3次元の脳血管撮影です。矢印の部分で中大脳動脈が閉塞しています。

脳血流検査

脳の血管が細くなったり詰まっている場合に行われます。脳の血のめぐり(脳血流)を画像化することで、 どの部分にどの程度の血流があるかを知ることができます。

治療

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脳梗塞を発症した場合には、一刻も早く詰まった血管を通すことが重要です。

t-PA (組織プラスミノーゲンアクチベーター)

脳梗塞を発症して短時間であれば、t-PAという薬で血栓を溶かす治療ができます。どんなタイプの脳梗塞でも治療することができますが、症状が出てから4時間半以内に開始しなければなりません。
ですから一刻も早く、救急車を呼ぶことが重要です。
ただし、実際には時間的に間に合わない人が多く、この治療が受けられるのは全体の5%程度とされています。また、うまく間に合ってこの治療を受けても、脳の太い血管が詰まっている場合には症状が良くならない方が多いことが分かってきました。

血栓回収療法

t-PAを受けられなかった、あるいは治療を受けたが効かなかった患者さんには、カテーテルを使って脳血管の血のかたまりを取る治療が行われます。原則、発症後8時間まで可能です。
この治療は、t-PAを含んだ内科的治療よりもはるかに有効であることが証明されました。(ただし、治療する医師は日本脳神経血管内治療学会の専門医か、それに準ずる経験を有することが必要です。)

  • 治療前

    矢印の部分で血管が閉塞しています。

  • 治療後

    閉塞していた血管が開通しています。

予防

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脳梗塞のタイプによって予防法が違います。

ラクナ梗塞

高血圧などの危険因子を管理し、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を使って予防します。

アテローム血栓性脳梗塞

血管が細く、発作を起こした場合には、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服します。一方、血管が高度に細い場合(60 ~ 70%以上)には血管を広げる手術をするかどうかの判定が必要です。
手術の方法としてはステントを用いて細い所を広げる治療(頚動脈ステント留置術)か外科手術で血管の壁を取り出す手術(頚動脈内膜はくり術)が行われます。
 一方、脳内の動脈(中大脳動脈など)が細い場合には、まず内科的治療をしっかりと行います。

心原性脳梗塞

心臓が原因の脳梗塞に関しては、血液をサラサラにする薬の中でも、抗凝固薬というタイプのものが使われます。最近では出血合併症の少ない新薬が使用できるようになりました。

脳血管バイパス術

脳の血管が詰まったり極端に細くなってしまっている場合、脳に流れる血液が少なくなります。こういったケースで前症状が出る場合があります。例えば麻痺や、言葉がしゃべれない、あるいはろれつが回りにくい といった症状です。そのような場合には、脳血流検査を行います。その結果、脳血流が悪い場合には脳梗塞の再発予防のため、脳の血管に皮膚の血管をつなぐ脳血管バイパス手術が行われることがあります。

治療の種類

脳梗塞に対しては、頭の皮膚の血管を脳の表面の血管(中大脳動脈、前大脳動脈)に顕微鏡下で直接つなぐ方法が行われます。 (直接バイパス)

この手術には、大きな開頭を行う方法と小さな開頭で行う方法の二つがあります。従来この手術は大きな開頭で行われることが多く、小さな開頭で行う場合には血管を一本しかつないでいませんでした。
しかし当施設では種々の工夫を行ったところ、小さな開頭で2本の血管をつなぐことが可能となっており、治療成績も極めて良好です。

対象となる患者さん

脳の血管が詰まっていたり細くなっていて、脳血流が悪い患者さんが対象となります。
高齢の方や傷あとを小さくしたい方にも有効です。