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くも膜下出血

はじめに

くも膜下出血は、主に脳の動脈にできたこぶ(瘤)が破裂して、脳の周囲(くも膜の下)に出血が起きる病気です。破裂直後に重篤な状態になることが多く、手術などを行っても、社会復帰できるのは全体の3分の1程度と言われています。破裂直後に動脈瘤から再出血することが多いため、出来るだけ早く動脈瘤の治療を行うことが重要です。

症状

突然の激しい頭痛(これまで経験したことがないような頭痛、ハンマーで殴られたような頭痛)が典型的な症状です。
ただし軽症の場合には軽い頭痛のこともありますし、逆に重症例では頭痛を訴える間もなく突然倒れてしまうこともあります。また、脳内血腫を合併する症例では半身麻痺を合併することがあります。

診断

頭部CT

この検査でくも膜下出血のほとんどが診断できます。

  • 矢印の部分にくも膜下出血を認めます。

腰椎穿刺(ようついせんし)

ごく軽微な出血や、発症から時間が経っていてCTでの診断が難しい場合には、腰椎穿刺(ようついせんし)という検査で腰から脊髄液を採取して出血の有無を確認することがあります。

頭部CTA (CTアンギオ)

くも膜下出血の原因を調べるために造影剤を点滴しながらCTを行い、脳の血管を調べる検査で、CTアンギオまたはCTAと呼ばれます。この方法でほとんどの動脈瘤が診断可能ですが、骨の近くの動脈瘤や解離性動脈瘤などは診断できないことがあります。この方法では図のように脳血管が立体的に写し出されます。

  • 矢印の部分に動脈瘤を認めます。

脳血管撮影(脳血管造影)

最終診断として行われます。カテーテルの操作によって、脳梗塞などを起こすリスクがわずかにありますが、最も確実に出血源を診断できます。また、3次元撮影で病変やその周囲の構造を詳細に観察することが可能です。

  • 脳血管撮影 (術前)
  • 脳血管撮影 (術後)
  • 動脈瘤がコイルで塞栓されています。

  • 3D-DSA(術前)
  • 3D-DSA(術後)
  • 留置されたコイルを赤色で表示しています。

治療

解説ムービー

最重症で救命の見込みがない場合を除いて、再出血を予防する治療が行われます。
出血の原因である脳動脈瘤(脳の血管がふくらんだところ)が、再出血しないように処置します。2つの治療法があり、くも膜下出血を来たした場合は、コイル塞栓術の方が好ましいというデータが出ています。ただ、クリッピング術が明らかに有利な場合もありますので、専門医が治療を選択します。

コイル塞栓術

太もものあたりの動脈から管を入れ、頭の中まで細い管を入れ、そしてその細い管を動脈瘤の中まで入れて、コイル(柔らかい金属の糸のようなもの、写真参照)で詰める方法です。局所麻酔でも治療が可能です。

開頭クリッピング術

開頭して顕微鏡を使って脳の隙間を広げ、動脈瘤の根元にクリップ(金属の洗濯バサミのようなもの、写真参照)をかけて血液が動脈瘤に入らないようにして破裂を防ぐ方法です。切るという欠点はありますが、入口の広い動脈瘤や複雑な形の動脈瘤にも対応できて、再発の少ない治療です。

くも膜下出血後の合併症

脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)

くも膜下出血の発症から4〜14日目に、脳の血管が縮むことがあります。その程度が強いと脳に流れる血液が減ってしまい、脳梗塞になってしまいます。このため、再出血予防の治療が終わった後は、この脳血管攣縮を予防する治療が行われます。治療にも関わらず症状が出てしまった場合には、脳の血管を広げるカテーテル治療(風船で広げたり薬を注入する治療)が行われることがあります。

水頭症(すいとうしょう)

くも膜下出血の発症から1ヶ月位すると脳の中の水の流れが悪くなる病気(水頭症)になることがあります。症状としては、1)覚えが悪くなったりぼーっとする(記銘力障害)、2)歩行が不安定になる(歩行障害)、3)尿をもらしてしまう(尿失禁)などが代表的です。 そのような場合には、脳にたまった水をお腹に流すチューブを入れる手術をします。

くも膜下出血は、再出血予防の手術だけでなく、脳血管攣縮と水頭症の三つを乗り越えて、はじめて帰宅できることになり、多くの場合、約4週間の入院を要します。

予防

解説ムービー

くも膜下出血の主な原因は脳動脈瘤の破裂です。ですから、破裂する前に脳動脈瘤を処置してしまえば発症せずに済みます。方法としては出血時と同様、開頭クリッピング手術やコイル塞栓術などが行われます。 ただし② ~ ④の病気も、くも膜下出血の原因となることがあります。

  • 脳動脈瘤
  • 脳動静脈奇形
  • もやもや病
  • その他(頭部外傷、脳腫瘍、血液疾患など)