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もやもや病

はじめに

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もやもや病は、脳の血管が徐々に細くなり、やがて詰まってしまう病気です。そして、それによる血流不足を代償するため脳の細い動脈が太くなり、脳血管撮影でタバコの煙のように「もやもや」した様子に見えるため「もやもや病」と呼ばれています。この病気は日本人に多く、その原因として遺伝子異常が報告されています。5歳前後の子どもと成人の二つの発症のピークがあることが知られています。我が国の特定疾患に指定され、難病の一つとされていますが、うまく治療を行えば、経過は比較的良好です。

症状

脳の血流が足りなくなることによる脳梗塞と、もやもや血管が破綻することによる脳出血で発症します。子どもの場合は脳梗塞が多く、成人では脳梗塞と脳出血が半々程度に起きるとされています。
症状としては、突然の半身麻痺や言語障害、知覚異常、視野異常、てんかんなどがあります。また、もやもや病の発作は、過呼吸で誘発されることで有名です。たとえば泣いた時や大声を出した時、ラーメンなどをふうふうと吹いたり、笛などの吹奏楽器の演奏、激しい運動後などに発作を起こします。これは過呼吸で血液中の二酸化炭素濃度が低下して脳の動脈が縮み、脳血流が減少するためです。発作を繰り返す場合には脳梗塞になる可能性が高いので専門医の診察が必要です。
一方、脳出血の場合には、その部位に応じた症状が出ます。出血のタイプとしては脳内出血、脳室内出血、くも膜下出血があります。出血は前ぶれなく突然起きることが多く、重度の場合には生命を失ったり、後遺症の確率が高くなります。

診断

主にMRI、脳血管撮影などで診断されます。MRIやMRAで診断が可能なことが多いのですが、もやもや血管がうまく描出されず、通常の動脈硬化性病変と診断されたり、見逃されることもあります。従って確定診断のために脳血管撮影が行われます。

  • 頭部CTA

    両側の内頚動脈の描出が不良です。矢印の部分は、もやもや血管を疑わせる所見があります。

  • 脳血管撮影

    右頚動脈撮影では右内頚動脈は閉塞し、もやもや血管を認めます。CTAよりもやもや血管が明瞭に描出され、診断能が高いことがわかります。

治療

前述のように、もやもや病は、子どもの場合には脳梗塞で発症しますが、成人の場合には脳梗塞と出血が半々と言われています。
このため、成人の場合、脳梗塞予防のために血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服していると、出血時に血が止まりにくくなるため重症化する可能性があります。したがって成人の場合は、薬なしで様子を見るか、血流を増やすバイパス手術のどちらかを選んで頂いています。
手足の脱力発作や言葉が出なくなる発作を繰り返すような場合には脳の血液不足を改善するため、バイパス手術を行う必要があります。一方、出血を起こした場合にもバイパス手術が再発予防に有効かどうかについては議論がありましたが、最近有効であることが報告されました。
自分にあった治療を受けるためには、もやもや病に精通した脳神経外科医を受診することをお勧めします。

急性期治療

脳虚血発作や脳梗塞の場合は、脳保護薬の点滴や血液をサラサラにする点滴が行われます。それでも発作が止まらない場合には緊急でバイパス手術が行われます。一方、出血の場合には、軽症であれば様子を見ますが、重症の場合には緊急手術で脳出血を取り除く手術が行われます。

慢性期治療

内科的治療

状態に合わせて、抗血小板薬、抗てんかん剤などの投与が行われます。

バイパス手術

虚血発作の再発予防として、バイパス術が有効とされています。バイパス術には頭の皮膚の血管を脳の表面の血管(中大脳動脈、前大脳動脈)に顕微鏡下で直接つなぐ「直接吻合」と、脳を包んでいる膜(硬膜)や側頭部の筋肉などを脳の表面に置き、術後に徐々に小さな血管のつながりが形成されるのを待つ「間接吻合」があります。直接吻合と間接吻合と組み合わせる「複合バイパス」が最も効果的と考えられます。また、間接吻合だけ行う方法や、頭の骨に孔をあけるだけといった手術も行われていますが、上記の方法に比べ脳血流改善の点で確実性に欠けます。私たちはこれまで100名以上の患者さんに複合バイパスを行い、極めて良好な結果を得ています。