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頚動脈狭窄症

はじめに

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頚動脈は、あごの下にドクドクと触れる血管で、脳に向かう最も太い動脈です。ここが動脈硬化で高度に細くなると、脳梗塞の原因になります。最近ではクリニックなどで行われる超音波検査(エコー)で診断されることが増えています。ただし「頚動脈の壁が厚い」と指摘された場合と、「頚動脈が細い」と診断された場合では状況が違います。「壁が厚い」だけでは直ちに脳梗塞になることはありません。壁が相当分厚くなり、血管の中が半分以上狭く(細く)なるような場合に脳梗塞を起こすリスクが出てきます。まずこの違いを知ってください。
一方、MRIなどで「頚動脈狭窄症と診断された場合には、かなり細いことが予想されます。このため、脳神経外科または脳卒中専門医を受診して、さらに詳しい検査を受けてください。

症状

頚動脈狭窄症自体では症状はありませんが、狭窄が原因となって脳梗塞を起こすと、半身マヒや言語障害などを生じます。
頚動脈狭窄症は過去に発作を起こしたことがあるかどうかで、その後の発作率が大きく違います。過去に発作がなく検査で偶然見つかった場合は「無症候性病変」と診断され、脳梗塞を起こす確率は年間2%程度と報告されています。一方、過去に脳梗塞や一時的な発作(一過性脳虚血発作)を起こした場合には「症候性病変」と診断され、内服治療を受けても、年間13%という高い確率で再発作を起こすことが知られています。

診断方法

頚動脈超音波検査(エコー)

体に負担がなく廉価でありながら、狭窄率やプラークの質まで診断することが可能ですので、最初に受けるべき検査です。 しかし検査する人の技術の差が出やすく、石灰化が強い病変では良い画像を得にくいという欠点もあります。

MRA

MRIにより血管を写し出す方法です。比較的高価ですが、ほぼ無侵襲に頭蓋内血管から頚部血管まで検査が行えるるため、頚動脈エコーと並んで第一選択として行われます。

CTA

造影剤を点滴しながら行う検査です。画質は上記の2つより良好で、頭蓋内血管から大動脈などの胸の辺りまで同時に検査が可能です。また血管の石灰化(堅い部分)も明瞭に描出できるため、精密検査として行われます。 ただし、造影剤による副作用が起きることがあり、喘息や重度アレルギー、腎臓の悪い方には検査を行いにくいという欠点があります。

脳血管撮影

カテーテルと造影剤を用いた検査法で最も侵襲的ですが、画質が良く、詳細な検査が可能です。 手術が予定されている場合に術前検査として行われます。

治療方法

血管が高度に細い(60%〜70%以上)場合には薬よりも外科手術の方が脳梗塞予防効果が高いというデータが出ています。手術には頚部を切る外科手術(頚動脈内膜はくり術)と風船とステントで広げる手術(頚動脈ステント留置術)の2つがあります。我が国では外科手術よりも血管内治療であるステント留置術の方が多く行われています。

内服治療

抗血小板薬

血液をさらさらにして血栓ができにくい状態にすることで脳梗塞を予防します。
狭窄が軽度の場合にはこの薬で十分に予防効果があります。ただし狭窄が高度の場合には、こういった薬を内服していても、脳梗塞を起こすことがありますので、頚動脈内膜はくり術や頚動脈ステント留置術を行う必要があります。

スタチン

動脈硬化を改善する作用があると言われています。私たちの研究でも、頚動脈に狭窄のある患者さんにこの薬(特にストロングスタチン)を内服してもらったところ、わずか半年で動脈硬化の改善効果が認められました。

その他

糖尿病治療薬や降圧剤のうち、動脈硬化安定作用が報告されているものがあります。これらの作用は強いものではありませんが、脳梗塞予防効果が期待されています。

頚動脈ステント留置術

この治療法は金属製のメッシュ状の筒(ステント)を用いて、頚動脈の細い部分を広げる方法です。外科手術(頚動脈内膜はくり術)が可能な患者さんでも、ステント留置術で同程度の有効性が得られることが示され、年々治療数が増加しています。

対象となる患者さん

頚動脈が高度に細い患者さんが治療の対象となります。脳梗塞の既往がある方はもちろん、既往のない方も狭窄度が高い場合にはこの治療法を受けた方が良い場合があります。ただし血管の壁が極めて堅い場合や柔らかい場合には合併症率が高くなることが知られており、そのような場合には外科手術が勧められます。

手法

治療法はシンプルです。まず足の付け根から管を入れ、頚動脈まで誘導します。
その後、細い部分を風船で広げ、ステントという金属の網の筒を留置します。(図1)
治療中にできる血管の破片などが頭の中に流れていかないようにブロックしながら治療を行うことが重要で、最近ではバルーン型またはフィルター型の器具で脳を保護しながら治療が行われます(図)。
治療前から血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を2種類内服し、3ヶ月経過した時点で1種類に減らします。治療後は通常3-5日ほどで退院となります。

頚動脈内膜はくり術(CEA)

我が国では頚動脈ステント留置術が増えてきていますが、外科手術(頚動脈内膜はくり術)が行われることがあります。細くなった部分の血管の壁が石灰化でカチカチになってしまい、風船やステントで開きにくい場合と、血管の壁が柔らかすぎてステントを置くとその網目からはみ出てくるような場合です。こういった場合にはステント留置術のリスクが高いため、外科手術が勧められます。
細くなった頚動脈を直接手術で切開し、動脈硬化で厚くなった壁を取り除きます。
この治療法は血管の狭窄が高度な場合に、薬だけによる治療よりも脳梗塞の予防効果が高いことが証明されています。